あのOCDを今風に再構成!? Wampler tcd サウンドレビュー

エフェクター

ギタリストなら誰しも一度は通る道、それが「Fulltone OCD」というペダルです。 アンプライクな歪み、ピッキングへの追従性、太く粘りのあるトーン……。数多くのプロに愛された名機ですが、バージョンによる個体差や、現在は入手困難であることなど、悩みも尽きないペダルでもありました。

そんな中、高品質なドライブペダルで定評のある Wampler Pedals(ワンプラー・ペダルズ) から、満を持して「OCDへの回答」とも言える新作が登場しました。 その名も 「tcd (The Compulsion Drive)」。

「Compulsion(強迫衝動)」という名は、明らかに「Obsessive Compulsive Disorder(OCD)」を意識したネーミング。しかし、単なるクローンではありません。3バンドEQや内部スイッチなど、現代のギタリストが求める機能をこれでもかと詰め込んだ、Brian Wampler氏渾身の一作です。

今回はこの注目の新作を実際に足元に置き、その実力を徹底的にレビューしていきます。果たして45,100円という価格に見合う価値はあるのでしょうか?

Wampler tcd:メーカーについて

出典:wamplerpedals.com

Wampler Pedalsは、自身もギタリストであるBrian Wampler氏が率いるアメリカのエフェクターブランドです。「アンプのようなペダル」を作ることに定評があり、特に歪みペダルの質の高さは世界中で信頼されています。

今回の「tcd」の最大の特徴は、以下の通りです。

  • 伝説の「Fulltone OCD」の回路をベースに、現代的なアレンジを追加。
  • 3バンドEQ(Bass, Mids, Treble)を搭載し、従来の「Toneノブ1つ」では届かなかった帯域調整が可能。
  • 2つのモード切り替えスイッチにより、クラシックなOCDサウンドと、よりモダンで太いサウンドを選択可能。
  • 内部DIPスイッチで「Fat(低域増強)」と「Diode(クリッピング追加)」を設定可能。

つまり、「OCDの美味しいところ」はそのままに、「もっとこうだったらいいのに」という要望を全て叶えた、まさに「完全版」とも言えるスペックを持っています。

↓裏蓋を開けると小さいスイッチが現れます。

出典:wamplerpedals.com

Wampler tcd:機材の詳細スペック

出典:wamplerpedals.com

筐体はWamplerらしい美しいシルバーのスパークル仕上げ。ノブの配置も整理されており、操作性は非常に良さそうです。

  • コントロール: Volume, Gain, Bass, Mids, Treble
  • モードスイッチ:
    • 下ポジション: トラディショナルなゲインステージ(クラシックなOCDスタイル)。
    • 上ポジション: カスケード接続されたMOSFETゲインステージ(よりハードでチューブライクなサウンド)。
  • 内部DIPスイッチ:
    • Fat switch: 低域の厚みを追加。
    • Diode switch: クリッピングダイオードを追加し、よりタイトでサチュレーション感のある歪みに。
  • 電源: 9V〜18V DC対応(18V駆動でヘッドルームが増加)

特に注目すべきは「3バンドEQ」です。オリジナルのOCDはToneのみだったため、アンプによっては「低音がブーミーすぎる」や「抜けが悪い」といった相性問題が出ることがありましたが、このEQがあればどんな環境でも「使える音」に補正できそうです。

Wampler tcd:サウンドレビュー

出典:wamplerpedals.com

実際にストラトとレスポールを使ってチューブアンプで音を出してみました。

■ 第一印象:圧倒的な「アンプ感」 まず驚くのは、その反応速度とダイナミクスです。 Gainを上げても、手元のボリュームを絞ればスッとクリーンに戻り、強く弾けば「ガッ」と食いついてくる。まさにチューブアンプを大音量で鳴らしている時の感覚そのものです。

■ モードスイッチの効き スイッチを「下(トラディショナル)」にすると、これぞOCD!といった感じの、少し荒々しくも倍音豊かなオープンなサウンド。コードの分離感が素晴らしいです。 スイッチを「上(MOSFET)」に切り替えると、一気に音が太く、密度が増します。中低域がグッと前に出てくる感じで、単音ソロを弾いた時のサステインと「粘り」が格段に気持ちよくなります。 この2モードの差は明確で、バッキング重視なら「下」、リード重視なら「上」といった使い分けができそうです。

■ 3バンドEQの威力 これが本当に便利です。 例えば、レスポールで低音が暴れすぎる時はBassを少しカットし、ストラトで線が細い時はMidsを足す。 従来のOCD系ペダルでは「アンプ側で調整するしかなかった」部分が、ペダル側で完結します。特にMidsの効きが絶妙で、アンサンブルの中で「抜ける音」を簡単に作れます。

■ Gainゼロでも使えるか試しましたが、Gainをゼロにしても音が出ます。そして、この状態がまた素晴らしい「クリーンブースター」になります。 原音に少しだけ艶と太さを足してくれるので、常時ONのプリアンプ的な使い方も十分にアリだと感じました。

Wampler tcd:評価できるポイントやマイナスポイント

【評価できるポイント】

  • 「3バンドEQ」の搭載: これだけでこのペダルを選ぶ理由になります。汎用性が段違いです。
  • 2つの実用的なモード: どちらも「使える」音で、ジャンルによってキャラクターを使い分けられます。
  • 内部スイッチの拡張性: 「もう少し低音が欲しい」「もう少し歪みをタイトにしたい」というマニアックな要望に応えてくれます。
  • ノイズの少なさ: かなりゲインを上げても、不快なノイズは非常に少ないです。

【マイナスポイント】

  • 価格: 45,100円は、オーバードライブペダルとしては高価な部類に入ります。
  • 内部スイッチへのアクセス: Fat/Diodeスイッチを切り替えるには裏蓋を開ける必要があり、演奏中に手軽に変えられないのは少し残念です。

Wampler tcd:こんな人におすすめ

  • かつてFulltone OCDを使っていたが、音作りにもう少し自由度が欲しいと感じていた人。
  • アンプライクな歪みが好きだが、特定のアンプとの相性で低音や高音の処理に悩んでいる人。
  • 1台でクリーンブーストからハードロックな歪みまで、幅広くカバーしたい人。
  • 「一生モノ」のメイン歪みを探している人。

Wampler tcd:Q&A

Q. オリジナルのFulltone OCDと比べてどうですか?
A. 音の「芯」や「キャラクター」は非常に忠実に再現されています。その上で、EQによる補正能力と、モード切り替えによるモダンな歪みが追加されているため、「上位互換」と言っても差し支えない完成度です。

Q. 18Vで駆動するメリットはありますか?
A. はい、あります。9Vよりもヘッドルーム(音の余裕)が広がり、よりダイナミックでクリアなサウンドになります。コンプ感が減り、ピッキングのニュアンスがよりダイレクトに出るようになるので、アンプライクな挙動を好む方はぜひ18Vを試してみてください。

Q. 内部スイッチはいじったほうがいいですか?
A. 基本的にはデフォルトのままで十分に素晴らしい音がします。ですが、シングルコイルで「もう少し音が細いな」と感じたらFatスイッチをONに、メタル寄りなタイトな歪みが欲しければDiodeスイッチをONにするなど、ギターや好みに合わせて微調整できるのが強みです。

Q. 初心者でも使いこなせますか?
A. EQのツマミが多いので難しく見えるかもしれませんが、基本はすべて12時でOKです。そこから「足りない」と思った帯域を少し足すだけで良い音になります。むしろ、音作りの勉強にもなる素晴らしいペダルです。

Q. メタルには使えますか?
A. 単体でモダンなデスメタルのような歪みを作るのは難しいですが、DiodeスイッチをONにし、ハイゲインアンプのブースターとして使えば、非常にタイトで攻撃的なメタルサウンドも作れます。

Wampler tcd:まとめ

出典:wamplerpedals.com

Wampler Pedals 「tcd」は、単なる懐古主義的なクローンペダルではありませんでした。 名機が持っていた「魔法のようなダイナミクス」を継承しつつ、現代の現場で求められる「確実なコントロール性」を見事に融合させた傑作です。

正直、価格は安くありません。しかし、これ1台あれば、スタジオのアンプが何であれ、ギターが何であれ、常に「自分の最高のトーン」を作ることができるという安心感が手に入ります。

「OCDの音が好きだけど、扱いづらさも感じていた」 「アンプライクなペダル探しの旅を終わらせたい」

そんなギタリストにとって、この「tcd」は間違いなく試す価値のある一台です。あなたの足元に、新たな「衝動(Compulsion)」を加えてみてはいかがでしょうか?

コメント