オイル缶エコーの幻想的な新次元ディレイ Strymon OLIVERA レビュー

エフェクター

今回紹介するのは、Strymonから登場した少し変わり種のディレイペダル「OLIVERA(オリベラ)」。新品価格は約44,000円。名前だけ見るとリバーブやディレイの派生モデルかと思いきや、その正体はなんと“オイル缶エコー”を再現したペダルです。

「オイル缶エコー」という言葉自体、初めて聞く方も多いと思います。筆者も最初は「なんだそれ?」という印象でしたが、調べていくうちにその深い魅力が見えてきました。今回はこのOLIVERAが持つサウンドの個性や特徴を詳しくレビューしていきます。

オイル缶エコーとは?

出典:allaccess.co.jp

オイル缶エコーは、1950年代にTel-Ray社が作り出した、ちょっと変わった仕組みのディレイ装置です。テープの代わりに、導電性のオイルを入れた回転する金属缶を使い、その中で電気信号をぐるぐる回してエコーを作り出していました。

仕組みはシンプルですが独特で、録音用のヘッドが1つ、再生用のヘッドが2つ付いていて、音を完全に消すための「消去ヘッド」がありません。そのため、缶の中に電気の余韻が少し残り、音がゆらゆらと消えずに響き続けるんです。この“ゆらぎ”や“濁り”が、オイル缶エコー特有の温かみを生んでいました。

OLIVERAは、そんな昔のアナログ機材の味を、現代のデジタル技術で丁寧に再現したモデルです。結果として、テープエコーやアナログディレイとはまた違う、まるで夢の中にいるような“しっとりとした響き”を味わうことができます。

OLIVERA:主な特徴

出典:allaccess.co.jp

  • オイル缶エコーを世界初のペダル化
  • ダークでモジュレーション感のあるリピート音
  • 200ms〜800msの可変ディレイタイム
  • フルステレオ入出力(TRS対応)
  • TRS MIDI/EXPジャック搭載、300プリセット保存可
  • USB-C経由でDAW制御やファーム更新可能
  • 高性能32bitプロセッサ&JFETステレオプリアンプ
  • S/N比116dBの超低ノイズ設計

現代的な機能をしっかり備えつつも、鳴らしてみるとどこか“懐かしい温かみ”を感じさせる音作りです。最新のデジタル処理によってノイズは非常に少ないのに、音の質感はアナログ機材のように丸みがあり自然。いわば「ハイファイなのにビンテージ」、そのバランス感覚がStrymonらしいと言えるでしょう。

OLIVERA:コントロールと機能解説

コントロール名機能・特徴
HEADSLong/Short/Bothの3モードで再生ヘッドを選択。リピートの間隔を変化。
TIMEオイル缶の回転速度を再現。200ms〜800msの範囲で調整可能。
RATEモジュレーションのスピードを調整。揺らぎの速さをコントロール。
INTENSITYモジュレーションの深さ。上げるほど幻想的なサウンドに。
MIXドライ/ウェットの比率。3時位置で50:50。
REGENリピートの量を調整。上げるとリバーブ的な広がりに。
Infinite Mode無限リピートを作り出す“サウンドスケープ機能”。

さらに、REGENノブを押しながら回すとトーン調整モードになり、リピート音の“明るさ”や“暗さ”を細かくコントロールできます。たとえばリピートを少し暗めにすれば古いレコードのような味わいに、明るくすれば空間系の広がりをより前に出せます。
また、トゥルーバイパス/バッファードバイパスの切り替えも可能で、長いケーブルを使っても音質を損ないません。さらに外部MIDIコントローラーやエクスプレッションペダルを接続すれば、ライブ中でもディレイタイムやモジュレーションをリアルタイムに操作できるなど、拡張性も非常に高い設計です。

OLIVERA:サウンドの印象

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OLIVERAの音は一言でいえば“酔うようなエコー”。ディレイタイムを揃えても、わずかに不規則に揺れ、音がまるで生きているかのように漂います。弾いた瞬間の音が、時間の経過とともに溶けていくような不思議な感覚です。
クリーントーンでは、幻想的で浮遊感のある空間が広がり、コードを鳴らすだけでアンビエントな雰囲気に包まれます。歪みと組み合わせれば、まるで古いフィルム映画のワンシーンを見ているような、モノクロームで湿った残響が生まれます。

「Both」モードでは2つの再生ヘッドのリズムがわずかにズレて重なり、リピートのたびに音像が変化していくような有機的な揺らぎを感じられます。コーラスのようなモジュレーション感とリバーブのような奥行きが同時に得られるのがこのモードの醍醐味です。

全体のトーンはややダークで、ハイエンドが少し抑えられているため、どのアンプでも耳に優しく馴染みます。いわば“ローファイなのに上品”。ノイズは極めて少なく、Strymonらしい高解像度の処理の中に、アナログ的な温かさがしっかり息づいています。
実際の使用レビューでも、コードプレイでは深い立体感が出て、単音リードでは幻想的な“後追いのエコー”が心地よく残ると高く評価されています。

OLIVERA:操作性

見た目はシンプルな6ノブ構成ながら、各ノブの効きが絶妙で、想像以上に繊細なニュアンスコントロールが可能です。特にREGEN(リピート量)とINTENSITY(モジュレーション深さ)の組み合わせで、残響の質感が劇的に変わります。少しの調整で“淡いリピート”から“ぐにゃりと歪む幻想的なエコー”まで幅広く対応でき、プレイヤーのタッチや楽曲のテンポに自然に寄り添ってくれます。
タップテンポはあえて非搭載ですが、これは開発者が「正確さよりも偶然の揺らぎを楽しんでほしい」という意図で採用したもの。音の間合いを“手で作る”感覚が、演奏体験をより有機的にしています。

サイズもコンパクトで、他のStrymonペダル(DIGやEl Capistanなど)と並べても統一感のあるデザインです。筐体はアルミ製で非常に頑丈、ノブのトルク感も適度に重く、ライブ中に不用意に動くこともありません。実際に踏んだ際のフットスイッチの感触も上質で、まさに“プロユースの道具”という印象です。

OLIVERA:他製品との比較

製品名特徴比較ポイント
Strymon DIG透明感あるデジタルディレイOLIVERAはより温かく、有機的。DIGは正確でクリア。
Strymon El Capistanテープエコー再現モデルOLIVERAはより濁りのあるローファイ感。リピートも不規則。
MXR Carbon CopyアナログBBDディレイOLIVERAの方が広がりと立体感があり、アンビエント向き。

OLIVERAはどのモデルとも被らない個性を持っています。Strymon DIGのように正確なデジタルディレイではなく、音の輪郭が柔らかく“滲む”印象です。El Capistanのテープエコーと比べても、より不規則で湿度を感じるリピートが特徴で、アナログBBD系のMXR Carbon Copyよりもレンジが広く、ステレオの広がりと立体感は圧倒的です。

同社のVolanteやTimelineのような多機能フラッグシップモデルと比べると、OLIVERAはシンプルな操作系ながら、エモーショナルな表現力では決して劣りません。特に“Both”モードで得られる独特の揺れは、他のディレイでは再現が難しい独自のキャラクターを持っています。

テープやデジタルの整然としたサウンドに飽きたプレイヤーにとって、OLIVERAは“もうひとつの現実感”を与えてくれる存在です。

OLIVERA:こんな人におすすめ

  • 通常のディレイでは物足りない方
  • ローファイ/アンビエント/ドリームポップ系の音作りをする方
  • 不規則なリピートで独特の空間を演出したい方
  • テープやBBD以外の個性派ディレイを探している方

“きっちりしたテンポ感”よりも“感覚的な雰囲気”を重視するプレイヤーにこそ、このOLIVERAは刺さるでしょう。

OLIVERA:まとめ

出典:allaccess.co.jp

Strymon OLIVERAは、オイル缶エコーという幻の技術をモダンな形で蘇らせたディレイペダルです。濁り、ゆらぎ、残響――そのどれもが有機的で、聴く人の感情に訴えかけるような響きを持っています。弾くたびに異なるニュアンスを返してくるような“偶然の美しさ”があり、まるで演奏者と一緒に呼吸しているかのような感覚を味わえます。

テープやアナログBBDでは得られない“湿った空気感”と“ゆるやかな時間感覚”を求めるなら、このOLIVERAは間違いなく新しいインスピレーションを与えてくれるでしょう。特にアンビエントやシネマティックな楽曲制作、サウンドスケープ的なギタープレイにおいては、他のどんなディレイでも出せない深みを加えてくれます。

また、単にレトロサウンドを再現するだけでなく、Strymonらしい高品位なステレオ処理と低ノイズ設計によって、スタジオクオリティのサウンドを実現しています。過去の“偶然”と現代の“精密さ”が融合した、新しいタイプのアートペダル――それがOLIVERAの本質です。

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