ビンテージロータリースピーカを本気で再現⁉BOSS RT-2 実機レビュー

エフェクター
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BOSSから登場したRT-2を初めて見たとき、「なんじゃこりゃ!?」と思わず声が出ました。中央に配置された光るディスプレイが、ロータリースピーカーの回転を模して動くのです。パッと見はコンパクトエフェクターですが、その存在感は異質。揺れ系エフェクトの一種としては価格が3万円超とやや高めに感じましたが、どうやら単なるコーラスやトレモロの延長ではなく、本格的な機能が詰め込まれているようです。

製品概要と基本仕様

出典:BOSS

RT-2の新品価格は31,900円(税込)。サイズは標準的なBOSSコンパクトと同等で、ペダルボードに収まりやすい形です。電池駆動には対応せず、ACアダプターでの使用が前提。ステレオイン/アウトに対応しており、外部フットスイッチやエクスプレッションペダルを接続すれば操作の幅が広がります。BOSS製品らしく、安心の5年保証付きなのも嬉しいポイントです。

ロータリースピーカーとは?

ロータリースピーカーは、1940年代に登場した独自の機構を持つスピーカーです。キャビネットの内部に搭載されたスピーカーやホーンが物理的に回転することで、音の定位や音量が周期的に変化し、特有の揺らぎと立体的な広がりを生み出します。代表的なモデルとしては Leslie 122 が知られ、特にオルガン奏者にとっては欠かせない存在でした。ジャズやゴスペル、さらにはロックまで幅広いジャンルでそのサウンドが愛用され、ギターにかけた際にはコーラスやトレモロとも違う「空間そのものが回っている」ような感覚を与えてくれます。

しかし実際のロータリースピーカーは、内部でスピーカーやホーンを物理的に回転させる構造ゆえに非常に大きく、重量も相当なものになります。さらに製造コストも高いため、アンプよりも高額になるケースも珍しくありません。したがって、自宅での使用や持ち運びを考えると現実的ではなく、多くのギタリストはロータリーサウンドを気軽に取り入れることが難しかったのです。

その解決策として登場したのが、デジタル技術を用いたロータリーエフェクターです。これらは本物のスピーカー回転を再現するアルゴリズムを搭載し、物理的なサイズや重量を気にすることなく、ペダルボードに収まる形でロータリーサウンドを楽しめます。BOSS RT-2はまさにその代表格で、ヴィンテージ機材の複雑な挙動をコンパクトな筐体に収め、視覚的にも回転を感じられるディスプレイを備えるなど、リアルさと実用性を両立したペダルといえるでしょう。

また「アナログこそ正義」という方はぜひ、所有してみてください。

出典:鈴木楽器製作所

3つのロータリー・モード

RT-2には3種類のモードが搭載されています。

  • Mode 1:ヴィンテージ・ロータリーを忠実に再現。温かみがあり、Leslieライクな王道サウンド。
  • Mode 2:レンジを広げ、音抜けを強化したモード。歪みとの組み合わせにも強く、モダンなアンサンブルにマッチ。
  • Mode 3:オリジナルの強烈な回転感と深い歪みを加えた、攻めたサウンド。現代的で存在感のあるロータリーが得られます。

単なる再現にとどまらず、BOSS独自の解釈で「実用的に進化させたロータリー」を提供しているのが魅力です。

DRIVEノブの役割

ヴィンテージのロータリースピーカーには真空管アンプが内蔵されており、そのサチュレーションも大きな要素でした。RT-2では、DRIVEノブでその歪みを再現可能。クリーントーンに軽くドライブを足せばレトロな雰囲気に、深めに上げればローファイで個性的な音作りができます。また背面スイッチを切り替えると、DRIVEノブを「トレブル/ベースのバランス調整用」として使うことも可能。キャラクターを追い込むのに役立ちます。

操作性と演奏中のコントロール

出典:BOSS

中央のディスプレイは、トレブルローターとベースローターの回転を視覚化。見た目に楽しいだけでなく、演奏中の状態把握にも便利です。ペダルスイッチを踏めばエフェクトのON/OFF、長押しでFAST/SLOWを切り替え。さらに背面のRISE/FALL TIMEスイッチで、速度の移行を「じわっと変化させる」か「即切り替え」にするか選べます。外部フットスイッチやエクスプレッションを使えば、スピードコントロールやブレーキ機能も追加可能。ライブでの表現力が大きく広がります。

実際に使ってみたサウンド

出典:BOSS

クリーントーンにかけると、一瞬でオールドスクールな空気感に。アルペジオが一気に立体的になり、聴く人の耳を惹きつけます。歪みと組み合わせると、ソロに厚みと存在感を与え、他の空間系では得られないインパクトが出ます。ステレオ接続すればさらに広がりが増し、スタジオやライブで特に効果的。ロータリーならではの加速/減速のニュアンスも自然で、表現の幅が非常に広いと感じました。

良かった点

実際に触ってみて強く感じたのは、まずこのコンパクトなサイズで本格的なロータリースピーカーの響きを再現できるという点です。従来はラックや大型ペダルでしか手に入らなかった表現力が、手のひらサイズのボディに収まっているのは驚きでした。さらにステレオ入出力に対応していることで、空間的な広がりは圧倒的。モノラルで使っても十分ですが、ステレオ環境で鳴らすと、まるで自分のギターサウンドがステージ全体を回転しているかのような包み込む感覚を味わえます。

また、DRIVEノブの二役機能も大きな魅力です。ロータリースピーカー特有の真空管アンプのサチュレーションをシミュレートすることで、ほんのりとした温かみを足したり、あえて深めに歪ませて攻撃的な揺れを作ったりと、単なるモジュレーションでは終わらない幅広い音作りが可能になっています。さらに、このノブを切り替えてトレブル/ベースのローターのバランスを調整できるのもユニークで、音色を追い込みたい人にはたまらないポイントでしょう。

そしてもうひとつ忘れてはいけないのが、中央に配置されたバーチャル・ロータリー・ディスプレイ。赤と緑の光が回転速度に応じてくるくる動く様子は視覚的にも楽しく、ライブでボードに組み込んでいるだけで注目を集めます。単に「音が良い」というだけでなく、存在感や話題性も兼ね備えている点は、このRT-2ならではの良さだと感じました。

気になった点

一方で気になる部分もあります。まず価格について。揺れ系エフェクトというジャンルに絞れば、31,900円という定価はやや高めに感じる人もいるでしょう。コーラスやフェイザーで代用できる場面もあるため、「ロータリーにどこまでこだわるか」で評価が分かれそうです。

また、ロータリー特化型ゆえに汎用性ではやはりコーラスやマルチエフェクターに一歩譲ります。ロータリーの音を求めない場面では使用頻度が下がり、ボード内でのスペースを専有してしまう可能性もあります。ペダル自体はコンパクトサイズながら、存在感は強めなので、他のエフェクターとの兼ね合いを考える必要があるでしょう。

さらに操作面については、FASTとSLOWの切り替えが長押しに割り当てられているため、慣れるまで少し時間がかかります。素早く切り替えたい場面では、別売りのフットスイッチやエクスプレッションペダルを併用した方がストレスなく使えるでしょう。

総じて、RT-2は「ロータリーサウンドに魅力を感じるかどうか」で評価が変わるペダルです。価格や特化性をどう捉えるか次第ですが、その分得られる体験は確かに唯一無二で、ステージでもスタジオでも存在感を放つことは間違いありません。

BOSS RT-2 Q&A

Q1. RT-2はどんなエフェクターですか?
A1. RT-2はヴィンテージのロータリースピーカーをデジタルで再現したコンパクトペダルです。物理的にスピーカーを回転させる仕組みをシミュレートし、独特の揺らぎと立体的な広がりを手軽に楽しめます。

Q2. RT-2で選べるモードはありますか?
A2. はい。3種類のモードが搭載されています。モード1はLeslie 122をベースにしたクラシックなロータリーサウンド、モード2はより広いレンジと歪みエフェクトとの相性を強化したチューニング、モード3はBOSS独自の新しいロータリーサウンドで、強い回転感と深い歪みが特徴です。

Q3. DRIVEノブの役割は?
A3. DRIVEノブは2つの機能を持っています。ひとつは真空管アンプ風のサチュレーションを加えるオーバードライブ的な使い方、もうひとつは「BALANCE」に切り替えることで、トレブルローターとベースローターの音量バランスを調整する機能です。

Q4. 回転速度の調整はどうやって行いますか?
A4. 本体のノブでFASTとSLOWの速度をそれぞれ設定できます。また、ペダルスイッチを長押しすることで回転速度を切り替え可能。さらに、裏面のスイッチで「RISE/FALL TIME」を設定すれば、速さの移行をじっくり変化させるか、即座に切り替えるかを選べますQ5. 視覚的に回転を確認できるって本当ですか?
A5. はい。中央の「バーチャル・ロータリーディスプレイ」が回転を模したLED表示になっており、回転速度や状態を視覚的に確認できます。単なるギミック以上に、操作感を直感的にしてくれる要素です。

Q6. 入出力や拡張性はどうなっていますか?
A6. ステレオ対応の入出力を備え、より立体的なサウンドを再現可能です。また、別売りのフットスイッチやエクスプレッションペダルを接続することで、FAST/SLOWの独立切り替えやBRAKE機能(回転を止める効果)など、より細かいコントロールが行えます。

Q7. 実機のロータリースピーカーと比べてどうですか?
A7. 実物のロータリースピーカーは巨大で高価ですが、RT-2はそのサウンドの本質を小さな筐体で再現しています。重量や価格の面で現実的に導入できない実機の代わりに、手軽にロータリーサウンドを楽しめる点が大きな魅力です。

Q8. ギター以外でも使えますか?
A8. もちろんです。ロータリーサウンドはキーボードやボーカル、さらにはドラムやベースにも応用可能。空間的な広がりと独特の揺らぎが加わることで、幅広い楽器に新しい表現を与えます。

Q9. 電池は使えますか?
A9. いいえ。RT-2は9V電池駆動に対応していません。ACアダプターによる電源供給が必須となります。

総評

出典:BOSS

ヴィンテージを超えた「新しいロータリー体験」

BOSS RT-2は、単なる模倣にとどまらず、ヴィンテージの魅力を現代的に使いやすくアップデートしたペダルです。ギターはもちろん、キーボードやボーカル、ベースにかけても面白い結果が得られるはず。価格は少々張りますが、得られるサウンド体験と表現力を考えれば納得感は十分。

さらに特筆すべきは、ロータリーエフェクトに対して3つものモードを搭載している点です。クラシックなサウンドを忠実に再現するだけでなく、より広がりを持った音像や、強い回転感を伴った攻めたモードまで用意されており、自分のサウンドイメージを大きく広げてくれます。また、中央のLEDインジケーターによって回転の速さを光で視覚化する仕掛けも、BOSSらしい遊び心を感じさせる部分です。音を聴くだけでなく「見て楽しむ」こともでき、演奏中の没入感を高めてくれます。

ペダルボードに1台入れておくだけで、新しいインスピレーションを与えてくれる存在。ヴィンテージを愛する人にも、斬新な空間表現を求める人にも響く、まさに「未来のロータリー体験」と呼べる1台だと感じました。

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