デジタルエフェクターの王者、Strymon(ストライモン)から、まさかの「フルアナログ」ペダルが登場しました。その名も「Fairfax(フェアファックス)」。
まず目を引くのが、中央に鎮座する巨大なDriveノブ。これまでのStrymon製品のような緻密なコントロール群とは一線を画す、ヴィンテージの放送機材やプリアンプを思わせる無骨なルックスが印象的です。
最近のペダルシーンでは「アンプライク」という言葉が溢れていますが、このFairfaxは「歪みを作る箱」ではなく、回路そのものが「小型のクラスAチューブアンプ」として振る舞う設計とのこと。
正直、最初は「Strymonが今さらアナログの歪み?」と半信半疑でしたが、実際に鳴らしてみると、今までの「ドライブペダル」の概念を覆すような、魔法のような使い心地がありました。今回はその詳細を徹底レビューします。
Strymon Fairfax:機材の特徴、メーカーについて

Strymonといえば「BigSky」や「Timeline」に代表される、超高性能なDSPを用いたデジタルエフェクターのイメージが強いブランドです。しかし、このFairfaxは同社初の100%アナログ回路を採用したシリーズの一角を担っています。
このペダルの最大の特徴は、1960年代の希少な真空管機材(一説には放送局用のプリアンプなど)の挙動をアナログ回路で再現している点です。
単に音を歪ませるのではなく、入力されたギター信号に対して「真空管アンプのパワーセクションがどう反応するか」を徹底的に追求しています。そのため、ペダルボードの最後段に置いて「アンプの質感を底上げするプリアンプ」として使うのが、この機材の最も得意とするスタイルです。
Strymon Fairfax:機材の詳細スペック

コントロールは非常にシンプルですが、中身は非常にパワフルです。
- Drive:歪みの量を調節。0付近ではクリーンブースト、上げればオーバードライブからファズに近い質感まで変化します。
- Level:出力レベル。
- SAG(サグ):このペダルの肝となるノブ。電源供給が追いつかなくなったチューブアンプ特有の「音の沈み込み」や「コンプレッション」を再現します。
- Brightスイッチ:高域の明瞭さを2段階で切り替え可能。
- 内部昇圧:9V電源を内部で40Vまで昇圧し、アナログならではの広いヘッドルームを確保。
スペック上の注目点は、やはり「SAG」ノブでしょう。サチュレーションというよりも「音の食いつき」を調整するツマミで、右に回すほど音が「ムギュッ」と潰れるような、ヴィンテージアンプ特有の弾き心地が得られます。
Strymon Fairfax:サウンドレビュー

実際にスタジオで鳴らした際の感想をまとめます。
■ 第一印象:音の「太さ」と「存在感」が別物になる Driveを最小にしてオンにするだけで、音がグッと前に出てきます。まるで細いケーブルを高品質なものに変えた時のような、あるいは高級なコンソールを通した時のような「リッチな質感」が加わります。
■ SAGノブの挙動 使い方が難しいかと思いましたが、触ってみると非常に直感的です。最小ではタイトでレスポンスが早い音ですが、時計回りに上げていくと、ピッキングに対して音が少し遅れて「咲く」ような、粘り強いトーンに変化します。 フルアップにすると、まるでアンプが壊れかけているような「ブチブチ」とした、それでいて心地よいスレッショルド感が得られ、オルタナティブやドゥーム系にもハマりそうな凶悪な顔も見せてくれます。
■ JC-120(ジャズコーラス)との相性が最高 特筆すべきは、日本のスタジオの定番「JC-120」との相性です。 JC-120特有の、アルミキャップから出る「チリチリした痛い高域」がFairfaxを通すことでマイルドに抑えられ、代わりに中域の密度が上がります。まるでJC-120が「使い込まれた小型チューブアンプ」に化けたような錯覚に陥るほどで、これには驚きました。
■ スタッキングの妙 他の歪みペダルの後ろに繋ぐと、そのペダルのポテンシャルが120%引き出されます。バラバラだった音の芯が一つにまとまり、パワーアンプがしっかり鳴っているような「パンチ」が加わります。
Strymon Fairfax:評価できるポイント、マイナスポイント
【評価できるポイント】
- 圧倒的なアンプ感:デジタルでは到達しきれない、アナログならではの「弾き手のタッチへの食いつき」があります。
- SAGノブによる表現力:ただ歪ませるのではなく、音の「質感」や「感触」をコントロールできるのは唯一無二。
- ギター側のボリュームへの追従:Driveを上げていても、手元を絞れば鈴鳴りのようなクリーンまで綺麗に落ちます。
- 頑強なビルドクオリティ:見た目の高級感と耐久性はさすがのStrymon。
【マイナスポイント】
- 価格設定:アナログのシングルペダルで34,500円は、少し勇気が必要な価格です。
- 多機能ではない:空間系エフェクターのような派手な変化を期待すると、最初は「地味」に感じるかもしれません。
Strymon Fairfax:こんな人におすすめ
- JC-120などのトランジスタアンプを使っていて、どうしても音に「真空管の粘り」が欲しい人。
- 今使っている歪みペダルの音を、もう一段階アップグレードしたい人。
- ヴィンテージの小型アンプが限界まで鳴っている時の「あの質感」が大好物な人。
- ギターのボリューム操作でトーンを操る、ニュアンス重視のプレイヤー。
Strymon Fairfax:Q&A
Q. SAGノブをどう設定すればいいか迷います。
A. まずは0から始めてみてください。バッキングでタイトに弾きたいなら0付近、ソロで音が伸びてほしいなら12時付近、意図的に音を潰して個性的なトーンにしたいなら最大付近、という使い分けが分かりやすいです。
Q. 歪みペダルとしてメインで使えますか?
A. はい、使えます。ただし「ディストーション」のような深い歪みというよりは、アンプが自然に歪んだようなサウンドです。激しく歪ませたい場合は、前段に別のペダルを置くスタッキングがおすすめです。
Q. Brightスイッチはどちらがおすすめ?
A. 繋ぐアンプによります。JC-120のように高域が強いアンプならスイッチをオフ(あるいは控えめ)に、ハムバッカーのギターで音がこもる場合はオンにすると、アンサンブルでの抜けが劇的に良くなります。
Q. 18Vのアダプターは使えますか?
A. 使えません。内部で自動的に昇圧しているため、入力は必ず「9V センターマイナス」を使用してください。電流容量(mA)はアナログのため低めですが、メーカー推奨の容量を確認して使用しましょう。
Strymon Fairfax:まとめ

Strymon Fairfaxは、派手なエフェクト効果を狙うものではなく、ギターとアンプというシステムの「格」を上げるための機材でした。
最初は「SAGって何?」と使い道に悩みそうでしたが、一度この粘りと食いつきを体験してしまうと、オフにした時の音が物足りなく感じてしまう……そんな「中毒性」のある一台です。
34,500円という価格は安くはありませんが、ボードの最後に置くだけでどんな現場でも「自分のアンプの音」を持ち運べる安心感が手に入ると考えれば、決して高い買い物ではないはずです。
「歪みペダル探しの旅」ではなく「理想の弾き心地探しの旅」をしている方に、ぜひ手に取ってほしい逸品です。


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