小さすぎるマルチエフェクターの使い勝手 VALETON GP-5 使用感レビュー

エフェクター

VALETONから登場したGP-5を最初に見たとき、正直「ここまで小型化できるのか」と驚かされました。マルチエフェクターの小型化が進んできた流れの中で、ついにここまでコンパクトになったのか、と。しかも流行りのIRやNeural Amp Modeling(NAM)対応まで搭載し、音質面でも大きな不安は感じません。価格は12,100円(税込)。しかし「便利そうだけど操作性は大丈夫か?」というのが第一印象でした。実際に触ってみると、その答えが少しずつ見えてきます。

VALETON GP-5:製品概要と仕様

出典:hotmusic.jp

GP-5は、手のひらサイズに近い超小型の筐体ながら、驚くほど多機能です。入出力はステレオ対応で、ヘッドホン端子も備え、宅録や練習に最適。USB Type-CでPCやスマホと接続すればオーディオインターフェースとしても機能し、DAWに直接録音が可能です。さらにBluetooth経由でアプリ連携ができ、バックトラック再生やドラムマシン機能も内蔵。

信号チェーンは最大10ブロック(NR/Pre/Drive/NAM/AMP/CAB/EQ/Mod/Delay/Reverb)を自由に並び替えられ、まさに“全部入り”と呼ぶにふさわしい仕様になっています。

VALETON GP-5:アプリ前提の編集

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GP-5は本体だけでもプリセット切り替えや音量調整など最低限の操作はできますが、本領を発揮するのはスマホ/タブレットアプリと組み合わせたときです。アプリ上ではエフェクトブロックをドラッグ&ドロップで並び替えられ、各ブロックのパラメータを細かく調整可能。

一度音を作ってしまえば、その後は本体単体で使えるので「編集=アプリ必須」「運用=本体だけ」という分業が自然に成り立ちます。ドラムマシンやBluetoothオーディオ再生と組み合わせると、練習用として非常に強力です。逆に「アプリを使うのは嫌」という人には向かないかもしれません。

VALETON GP-5:音作りのイメージ

実際にプリセットを作ってみると、驚くほど短時間で納得のいくトーンが作れます。例えば、定番のリードサウンドを作るなら以下の流れです。

  • アンプにJCM800を選び、4×12キャビを組み合わせる。
  • リバーブはホール、ディレイはステレオのPing Pongで奥行きを追加。
  • 前段にチューブスクリーマーを入れてゲインを絞り、タイトさを演出。
  • ノイズゲートをオンにして不要なノイズを抑制。
  • EQで高域を少しブーストすると抜けが良くなる。

これで「80年代ハードロックリード」がすぐ完成します。クリーントーンも、Matchless HC30のキャプチャを読み込み、モジュレーションリバーブ+テープディレイを加えれば、爽やかで広がりのある音が作れました。若干ダークめなキャラクターですが、EQで整えれば十分対応可能です。

VALETON GP-5:NAMとIRの扱い

GP-5の最大のポイントは、Neural Amp Modeling(NAM)とIRの両方に対応している点です。NAMを使えば実在のアンプやペダルのキャプチャを読み込めますが、この場合AMP/CABブロックは同時に使えません。つまり、キャビネット込みのキャプチャデータを使うのが基本になります。

IRについてはサードパーティ製も読み込めるため、自分好みのキャビネットシミュレーションを使えるのは大きな強み。NAMとAMP/CABを状況に応じて切り替えられる柔軟さは、上位機種顔負けです。

VALETON GP-5:コンパクトペダル的な使い方

面白いのは「AMP/CABをオフにしてコンパクトエフェクター的に使える」という点です。例えばオーバードライブ+ディレイ+リバーブを一括オンオフすれば、まるで単体ペダルを複数並べたような感覚で使えます。実際にチューブスクリーマーやSD-1系の音を比較しても、キャラクターをしっかり再現しており「十分実戦で使える」と感じました。

また、フットスイッチを「CONTROL」モードにすると、複数エフェクトを一度にオンオフできるので、ライブ中にソロ用サウンドへ切り替えるのも簡単です。さらに長押しでチューナーになる点も、実用性を高めています。

VALETON GP-5:ライブでの実用性

ステレオアウトを活かし、片方をPA直、もう片方をリターンに戻して中音を稼ぐといった運用も可能。完全にプロ用途を見据えたGP-200ほどの入出力自由度はありませんが、小規模ライブやセッションなら十分対応できます。USBオーディオIFとして宅録でも使えるため、スタジオ練習からライブ、本番録音までカバーできる万能機材といえるでしょう。

VALETON GP-5:良かった点、気になった点

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まず良い点として真っ先に挙げられるのは、12,100円という価格からは想像できないほど豊富な機能と音質のクオリティです。小型ながらNAM(Neural Amp Modeler)やIRに対応しており、自分好みのキャプチャやIRデータを自由に読み込める点は、このクラスのマルチエフェクターとして驚異的だと感じました。

練習用途としても、ドラムマシンやBluetoothオーディオ再生が備わっているため、これ一台あれば伴奏を流しながら演奏したり、自宅練習の幅をぐっと広げることができます。さらに、筐体は金属製でサイズも非常にコンパクト。カバンに入れて持ち運んでも不安を感じにくく、ライブやスタジオへの持ち込みにも向いています。加えて、チューナー機能やUSBオーディオインターフェース機能まで搭載しており、単なる練習機材にとどまらず、録音や配信環境にもそのまま組み込めるのは大きなメリットでしょう。

一方で、気になる点もいくつか見えてきました。最大の特徴でもある自由度の高い編集は、基本的に専用アプリを使うことが前提となっており、本体だけでは細かい調整が難しいのは少々不便に感じました。また、NAMと通常のAMP/CABブロックを同時に使うことはできず、いずれかを選択する必要があるため、柔軟な組み合わせを求める人には物足りないかもしれません。

さらに、リバーブなど一部のエフェクトにはEQが搭載されておらず、より緻密に音作りをしたい場面では制約を感じることもあります。サウンドの傾向についてもやや暗めにチューニングされている印象があり、EQで高域を持ち上げるなどの補正を加える前提で考える必要があるでしょう。

VALETON GP-5:Q&A

Q1. GP-5はどんな人に向いていますか?
A1. 初めてマルチエフェクターを導入する人に最適です。低価格ながらアンプモデルやIRに対応しているため、自宅練習からレコーディングまで幅広く対応できます。また、ギグバッグに入れて持ち運べるほど小型なので、セッションやリハーサルに手軽に持ち出したい人にも向いています。

Q2. ライブで使えるレベルですか?
A2. もちろん可能ですが、操作はアプリでの事前設定が前提になるため、ステージ上で瞬時に細かい調整を行うには少し不向きです。ただし、事前に音作りを済ませておけば、フットスイッチで切り替えながら実用的に使えます。ライン直結でPAに送れば、荷物を最小限にしてライブができます。

Q3. アプリなしで音作りはできますか?
A3. 本体だけでもプリセットの呼び出しや簡単な操作は可能ですが、細かい音作りはアプリが必須です。逆に一度作った音は本体に保存されるので、ライブやスタジオではスマホを持ち込まなくても運用できます。

Q4. 録音用途でも活躍しますか?
A4. はい。USB Type-CでPCやスマホに接続すれば、オーディオインターフェイスとして機能します。そのままDAWに録音できるので、自宅での宅録や配信にも活用可能です。特にIR対応のおかげで、ライン録音特有の違和感を大幅に減らせる点は魅力です。

Q5. 他の小型マルチと比べての強みは?
A5. NAMによるアンプキャプチャの読み込みに対応している点が大きな強みです。既存のアンプモデルだけでなく、コミュニティで共有されているキャプチャを取り込むことで、自分だけのアンプサウンドを構築できます。さらに、ドラムマシンやBluetooth再生など練習向けの機能が豊富で、単なるエフェクター以上の役割を果たしてくれます。

Q6. 弱点はありますか?
A6. 本体の小ささゆえに操作はシンプルに割り切られており、ライブで複雑なエフェクト切り替えを求める人には物足りないかもしれません。また、音色がやや暗めに感じる傾向があるため、EQでの調整を前提に考えると安心です。

VALETON GP-5:総評

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「最初の1台」から「切り札」まで

VALETON GP-5は、初心者にとっては「最初の1台」として十分すぎる性能を持ちながら、上級者にとっても「非常用の切り札」として機能する稀有な存在です。チューナーを買うのとほぼ同じ価格で、NAM・IR・USBオーディオIFまで備えたフル機能マルチが手に入るのは驚きとしか言いようがありません。

「小型化の終着点」ともいえる存在感を持つGP-5。スマホ前提という割り切りが自分に合うかどうかさえ確認できれば、間違いなくおすすめできるコストパフォーマンス抜群の一台です。

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