ほぼスマホなマルチエフェクター Mooer Prime M2 レビュー

エフェクター

Mooerから登場した Prime M2。最初に手に取った瞬間、「ん?スマホか?」と思ってしまうほどの見た目です。表面の仕上げや丸いディスプレイの光り方がまるでガジェットのようで、正直エフェクターというより“携帯型の音楽デバイス”といった印象でした。コンパクトペダルサイズにここまで詰め込んだデザインはやはりMooerらしい挑戦を感じます。前モデルのPrime P2はフットスイッチがなく、操作面でどうしてもストレスがありましたが、「M2では最初からこれを搭載してきたか!」という感覚。ようやく完成形に近づいたという印象を受けました。実際に触ってみると、見た目の軽さ以上にしっかりした造りで、内部にどんなサウンドが隠れているのか期待が高まります。

Mooer Prime M2:製品スペックと主な特徴

出典:mooer.jp

Prime M2を触ってまず驚かされるのは、その機能の多さと操作のしやすさです。小さな1.28インチのタッチスクリーンながら反応が良く、プリセットの呼び出しや各種設定がスムーズ。最大80スロットのプリセットを保存でき、ルーパーは最大80分の録音に対応。10個のスロットにフレーズを保存して切り替えることができ、ドラムマシンは56種類のリズムパターンを収録しています。さらにBluetooth接続でスマホ音源を流しながら練習でき、USB-OTG経由でPCに直接録音も可能。ステレオアウトやヘッドフォン端子も備え、どこでもすぐに“音楽が始められる”仕様です。内蔵リチウムバッテリーで約6時間駆動するので、スタジオでも屋外でも気軽に使えるのが嬉しいポイント。ここまでの機能をコンパクトに収めたことに、Mooerの開発力を改めて感じます。

Mooer Prime M2:カラーラインナップ

Prime M2は見た目のスタイリッシュさも魅力のひとつです。カラーは「シルバー」と「スペースグレー」の2色展開で、どちらも落ち着いた光沢感があります。どちらを選んでも高級感があり、ペダルボードの中でもひときわ目を引くデザイン。僕はスペースグレーを選びましたが、マットな質感で指紋もつきにくく、長く使っても飽きのこない仕上がりです。シルバーのほうはより明るく、スタジオなどの照明下で映える印象。どちらもMooerらしい洗練されたガジェット感があり、音だけでなく“持つ喜び”を感じられる仕上がりになっています。

実はエフェクターで色展開をしているメーカーはそれほど多くありません。その中でMooerがこうしたカラーバリエーションを用意しているのは、ブランドの遊び心とデザイン志向の強さを感じます。最近ではペダルボード全体の色を統一して世界観を作る人も増えているので、この2色展開はそうしたこだわり派のプレイヤーにも嬉しいポイント。実用性だけでなく見た目まで整えたい人にとって、Mooerらしいありがたい配慮といえるでしょう。

出典:mooer.jp

Mooer Prime M2:エフェクトモデルの内訳

Prime M2には合計194種類ものエフェクトモデルが詰め込まれています。アンプモデルは52種類で、クリーンはFender DeluxeやTwin Reverb系、クランチはVox AC30やMarshall JCM800系、ハイゲインはMesa/Boogie MarkシリーズやPeavey 5150系など、王道の音をしっかりカバー。キャビネットも25種類を標準搭載し、さらに10スロット分のサードパーティIRを自由に読み込むことが可能です。歪み・モジュレーション・リバーブ・ディレイといったエフェクト類も網羅され、計57種類におよびます。実際に試してみると、同タイプのエフェクトを同時に使える「ダイナミックチェイン」が非常に便利で、ディレイを2つ重ねて立体的な空間を作ったり、歪みを2段階でブレンドして“芯のあるリードサウンド”を作るなど、想像以上に音作りの幅が広がります。種類が多いだけでなく、組み合わせの自由度が高い点こそがPrime M2の大きな魅力です。

Mooer Prime M2:アンプモデルのクオリティについて

アンプモデルのクオリティは、価格帯を考えると驚くほど高いです。クリーン系ではFender系の独特な張りやきらめきが再現され、アルペジオを弾くとその艶感に思わずニヤリ。クランチではMarshall系の中域の押し出しと粗削りな歪みがリフにぴったりハマります。ハイゲインではMesaやEVH系の音圧が出ており、モダンメタルからリードまでしっかり対応。標準キャビIRのままでも十分使えますが、外部IRを読み込むと一気にリアルさが増します。まるで“アンプの前にマイクを立てたような”臨場感が生まれ、音の奥行きが一気に広がるのがわかります。IRを変えるだけでここまで変化するのは本当に面白く、思わず時間を忘れて試行錯誤してしまいました。

Mooer Prime M2:セッティングの自由度について

アプリを通してのセッティングの自由度は想像以上です。スマホ画面でブロックをドラッグして順番を変えるだけで、歪み→コンプ→モジュレーション→リバーブといった典型的なチェインから、あえて“逆順”にしてエッジを立たせた音作りも簡単。僕はJCM800モデルに軽めのコンプレッサーとクリーンブーストを追加し、アタック感を強調したセッティングを試しましたが、レスポンスが非常にナチュラルで弾いていて気持ちがいい。EQやキャビの切り替えもスムーズで、IRとの組み合わせによって自分好みの音を細かく追い込むことができます。Mooer Cloudで他のユーザーのパッチを参考にしながら、自分のトーンを作り上げていく作業も楽しく、音作りの自由度の高さを実感しました。

Mooer Prime M2:アプリの使い勝手について

専用アプリの完成度は非常に高く、ブロックの入れ替えやパラメータ調整がタップ操作だけで直感的に行えます。Mooer Cloudを通して他のユーザーが作成したプリセットやMNRSキャプチャをダウンロードすることで、音作りの幅が無限に広がります。僕もいくつかの海外ユーザーのパッチを試しましたが、自分では思いつかないような発想が多く「なるほど!」と感心することばかり。こうしたコミュニティ的な楽しみ方ができるのも、Primeシリーズならではの魅力です。とはいえ、音作りがスマホ前提という仕様には好みが分かれるでしょう。アプリ操作が苦手な人には少しハードルが高いかもしれません。

Mooer Prime M2:実際の使用感について

出典:mooer.jp

音質と操作性

音の質感は全体的にクリアで反応が速く、低域から高域までバランスよくまとまっています。特にIRを変えた瞬間の変化は驚きで、まるで別のアンプに切り替えたかのような印象。操作も直感的で、タッチスクリーンでプリセットを呼び出し、フットスイッチでルーパーやドラムマシンを操作できます。ただし、細かなパラメータ調整はスマホアプリ必須なので、現場での即調整にはやや不便さが残ります。ステージでは外部Bluetoothスイッチを組み合わせると快適に使えるでしょう。

練習ツールとして

Bluetooth経由でスマホ音源を再生しながら演奏できるのは想像以上に便利です。ドラムマシンとルーパーを併用すれば、自宅でも一人でセッション気分。リズム感のトレーニングや作曲のアイデア出しにも役立ちます。USB-OTGでの録音も試しましたが、思いついたフレーズをそのままDAWに録音できるのは非常に実用的。イヤホンでの練習でも音質がしっかりしているので、夜間練習にも最適です。レビュー動画で多くの人が「練習用に最適」と口をそろえていた理由がよく分かりました。

評価できるポイント

Prime M2の魅力は何といってもこのサイズ感と使い勝手のバランスです。ギグバッグのポケットにスッと入るほど軽量で、実際に持ち歩いてみると想像以上にコンパクト。出張先やスタジオ、カフェの隅っこなど、どこでも即席の練習環境が作れてしまいます。しかも内蔵バッテリーのおかげで電源を探す必要もなく、Bluetoothでスマホ音源を流しながらセッション気分で弾けるのも最高。ケーブル1本で完結する手軽さは“ちょっと弾きたい”という瞬間を逃しません。音質も十分以上で、外部IRを組み合わせれば、もはやライブでも十分通用するレベル。実際にPA直で鳴らしたときも、レンジの広さと立体感に驚かされました。宅録・練習・ライブのバックアップ──どのシーンでも自然に馴染む万能さがあり、“持ち歩ける相棒”という表現がぴったりです。

気になる点

ただし、いくつか気になる点もあります。本体単体で完結できる操作範囲が限られており、特にパラメータを細かく詰めたい時にはスマホアプリが必須になります。音作りの自由度が高い反面、ライブの最中に「もう少しだけトレブルを上げたい」といった細かな調整をしたくても、スマホを取り出して操作しなければならない点はやや煩わしいところ。バンドのリハや本番の現場ではスムーズさに欠ける印象です。また、プリセットの切り替えも2つのフットスイッチでバンクを移動する仕組みのため、素早く行き来したい場合は連打が必要になり、外部Bluetoothフットスイッチの導入が実用的です。さらに、筐体がプラスチック製であることも賛否が分かれる要素で、軽量化と携帯性を優先した反面、床面が固いステージや野外での使用ではやや不安を感じる場面もありました。とはいえ、仕上げ自体はしっかりしており、持ち運び用ケースなどで保護すれば問題なく長期間使えるでしょう。

Mooer Prime M2:価格の評価

今回の製品のコンセプトとしては、この小型筐体こそが最大の特徴だと思います。他社製品との価格比較もありますが、実際にここまでコンパクトで多機能なモデルは他に見当たりません。Prime M2はポケットにも入るサイズながら、アンプモデリングやIR対応、Bluetoothオーディオ、ルーパー、ドラムマシン、USBオーディオインターフェースなどをすべて搭載。もはや“全部入り”の域です。しかも、ほかの高性能マルチエフェクターが10万円前後するのに対し、Prime M2はそのおよそ3分の1程度の価格。『試しに買ってみよう』と思える絶妙な価格設定でもあります。BOSS GX-100やLine 6 HX Stompなど上位機種の3分の1以下の価格ながら、音質や操作性を大きく犠牲にしていない点は本当に驚きです。

このサイズでここまでやれるというのは、ある意味唯一無二の立ち位置。Prime M2は、限られたスペースや予算の中で最高のパフォーマンスを求めるギタリストにとって、間違いなく“買い”の一台といえるでしょう。

Q&A

Q. Prime M2はライブで使えますか?
A. メイン機としても十分使えますが、より安定した操作を求めるなら外部スイッチの併用がおすすめです。ステレオアウトやMIDI対応で柔軟に組み込めるのも強みです。

Q. サウンドクオリティは?
A. デフォルトIRのままでも良質ですが、外部IRを使うと一気に立体感が増します。歪みの粒立ちやアンプの反応も上位機種に匹敵します。

Q. 初心者でも扱える?
A. プリセットを選んで弾くだけなら簡単。ただし本格的に音を追い込みたい場合はアプリ操作が必須なので、スマホ操作に慣れている人に向いています。

Q. 前モデル(Prime P2)との違いは?
A. 最大の違いはフットスイッチが追加された点です。P2はスマホ操作が前提で、実際の演奏時に使いづらい面がありましたが、M2ではこの点が大幅に改善されました。バンク移動やルーパー操作が足元で行えるようになったことで、ライブでもストレスが減りました。

Q. 音作りの自由度は?
A. アプリ内でブロックを自由に並び替えたり、同系統エフェクトを複数重ねることができます。外部IRを使えばプロクオリティの音も再現可能。設定をクラウド共有して他のユーザーと交換するのも楽しいです。

まとめ

出典:mooer.jp

Mooer Prime M2は、想像以上に“全部入り”のコンパクトマルチです。手のひらサイズながらBluetoothオーディオ、USB録音、ルーパー、ドラムマシンなど機能が充実しており、1台で練習から宅録、ライブのバックアップまでこなせます。実際に使ってみても、持ち運びの手軽さと音の完成度の高さに驚かされました。

音質もこの価格帯としては抜群で、クリーンの張りやハイゲインの迫力も十分。特にIRを入れ替えると音の立体感が増し、自分の理想のキャビネットサウンドを追い込む楽しさがあります。スマホアプリとの連携もスムーズで、世界中のユーザーが共有するトーンをダウンロードしてすぐ試せる点も魅力です。

気になるのは、本体だけでは細かな調整が難しい点と、プラスチック筐体の耐久性。ただし、Prime P2で不満だったフットスイッチが改善され、実戦でも使いやすくなりました。総合的に見て、軽量・高機能なマルチを探している人には強くおすすめできる一台です。

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