Warm Audioがリリースした「Tube Squealer(WA-TS)」は、その名の通りチューブスクリーマーの血統を受け継ぐオーバードライブペダルです。新品価格は約23,000円。見た目からしてクラシックな緑の筐体ですが、中身はまさに“全部入り”。TS808、TS9、TS10という3種類の伝説的回路を一台にまとめ、さらに現代のプレイヤーに向けた機能を加えた意欲作です。ちなみにWarm Audioといえば、ケンタウルス系ペダルのリメイクでも話題になったブランドで、名機と呼ばれたエフェクターを現代的に再構築するのが得意なメーカーという印象があります。
Tube Squealer:デザインとクオリティ

筐体はクラシックなグリーンカラーで、ひと目で「TS系」と分かるルックス。Warm Audioらしくメタル筐体はしっかりしており、手作業による品質テストも施されています。トップマウントのジャック構造で、ペダルボードにもスマートに配置可能。重量はやや軽めですが、全体の質感は高く、ライブやリハーサルでも安心して踏める作りです。
Tube Squealer:機能と操作性

● 3モード切替(TS808/TS9/TS10)
中央のトグルスイッチで3つの代表的TSサウンドを切り替え可能。808はブレイクアップが心地よいクラシックなトーン、TS9はコンプレッションが効いた中域重視のドライブ、TS10は滑らかで現代的な明るいトーン。実機に近い細かな違いが再現されており、オリジナルを知る人ほど「ちゃんと分かる」絶妙な再現度です。
● ミックスノブ(クリーンブレンド)
クリーン信号を混ぜることで、ピッキングのニュアンスや倍音の輪郭を自在にコントロール可能。左端に回し切るとTSらしいフルドライブ、右に回すとクリーン寄りに。中央付近では両者が絶妙にブレンドされ、ブルースやカントリーにも合う自然な抜け感が得られます。このノブを“OFFクリック”できるのも親切で、瞬時にTSモードへ戻せる点が実用的です。
● ピックアップ・ボイシングスイッチ(Single/Humbucker)
中域のピーク帯を800Hz(シングル)と2kHz(ハムバッカー)で切替可能。ハムバッカーでこもりやすい音を一気にブライトに補正でき、逆にダークなストラトでもハイがしっかり出てくる印象。手持ちのギターを選ばず“ちょうど良い”抜け方に調整できるのが非常に便利です。
● 電圧ブーストスイッチ(9V→18V)
9V駆動ながら内部で18Vへ昇圧可能。ヘッドルームが広がり、ピッキングの反応や音の厚みが増します。よりアンプライクなレスポンスを求める人にはこのモードが断然おすすめ。OFFではコンプレッションが強くまとまり、ONでは余裕あるオープンなサウンドになります。
● バイパス切替(True/Buffered)
トップパネルのスイッチで即座に切替可能。長いエフェクトチェーンを組む場合でも音痩せを防げる設計です。内部DIPスイッチではなく外部から切り替えられる点も、ユーザビリティに優れています。
Tube Squealer:実際の使用感

鳴らしてまず感じたのは、「温かくも抜けるTSトーン」。
クリーンブースト的に使えば、TS808モードで中域の押し出しが強まり、アンプのスイートスポットを程よく押してくれる感覚。TS9ではコンプレッションが強めにかかり、リードトーンに最適。TS10モードは少しハイ寄りで、ピッキングに対する反応がとても自然です。
ハムバッカーで試すと、通常のTSでは失われがちな明るさとエッジがしっかり残ります。ピックアップスイッチを上げると、高域が開けて抜けが良く、ネック側でも輪郭がハッキリ。18VブーストをONにすれば音の立体感が増し、弾いていて思わず笑顔になるほど気持ちの良いドライブ感が得られました。
◎良かった点
まず、このペダルの最大の魅力は3つのTSモードを自在に切り替えられることにあります。808モードは温かく、クラシックなチューブスクリーマーらしさをしっかり感じられ、TS9モードでは中域の粘りが強調され、リードトーンがぐっと前に出てきます。TS10モードでは明るく抜けの良いトーンで、クリーン寄りのセッティングやブルース系のプレイにも非常にマッチします。ギターの種類やジャンルによってサウンドを使い分けることができ、プレイヤーの意図に柔軟に応えてくれる印象です。
さらに、ハムバッカーを使用した際のこもり感が解消されており、どのピックアップでも抜けの良いトーンを得られます。ミックスノブによるクリーンブレンド機能も秀逸で、ピッキングのニュアンスや倍音の輪郭を調整しやすく、アンプライクな質感を引き出すことが可能。18Vモードに切り替えた際のヘッドルームの広がりや、トップマウント端子、外部スイッチなどの細かい設計も含め、ライブでも録音でも扱いやすく、実用性が非常に高いペダルだと感じました。
△気になった点
一方で、モード間の違いはあくまで繊細で、劇的なキャラクター変化を求める人には少し物足りないかもしれません。また、筐体は軽量で持ち運びには便利ですが、踏み込んだ際のフィーリングがやや軽い印象を受けました。ノブやスイッチの数が多いため、初めて使う際は設定に少し時間がかかることもあります。ただし、一度操作に慣れてしまえば直感的に扱えるようになり、音作りの幅が非常に広いことを実感できます。総合的に見れば、細かな欠点を上回る完成度を持った魅力的なペダルです。
Tube Squealer:他製品との比較
製品名 | 特徴 | 価格帯 | 備考 |
---|---|---|---|
Warm Audio Tube Squealer | 808/9/10切替+クリーンブレンド+昇圧 | 約23,000円 | 現代版TSの決定版 |
Ibanez TS808 / TS9 / TS10 | 各モデルごとに個性あり | 約18,000〜35,000円 | 単一機能タイプ |
Maxon OD820 | 18V駆動で広いヘッドルーム | 約20,000円以内 | 温かく太いトーン |
JHS Bonsai | 8種のTS回路を集約 | 約40,000円前後 | 高機能だが高価 |
これらを比べると、Warm Audio Tube Squealerは価格・機能・汎用性のバランスが非常に優秀です。Ibanezのオリジナルシリーズがそれぞれ独立しているのに対し、WA-TSは3機種を1台で切り替えられる柔軟さがあり、サウンドの再現度も高いです。Maxon OD820はより太く滑らかなトーンを持ちますが、価格とサイズの点ではやや扱いづらい印象。
その点、Warm Audioはコンパクトで操作性に優れ、ライブでも持ち運びやすいという利点があります。結果的に、コストパフォーマンスを重視するプレイヤーや複数のTSキャラクターを試したい人には、Tube Squealerが最もバランスの取れた選択肢といえるでしょう。また、これらの名機はエフェクターのアイコン的な存在でもあり、所有感を満たしてくれるという点もあります。最終的には“ロマンか実用性か”といった選択になりますが、その両方をうまく兼ね備えたのがこのWA-TSだと感じます。
Tube Squealer:今回の機材は買いなのか?
結論から言うと、これは“買い”だと思います。価格を考えると、3種類のチューブスクリーマーのキャラクターを1台で味わえるというだけでも十分に魅力的です。加えて、現代的なプレイヤーが求める要素――クリーンブレンド、ハムバッカー対応スイッチ、内部昇圧による18Vモードなど――が非常にうまく融合しています。これらは単なるギミックではなく、実際に音作りの自由度を大きく広げてくれる実用的な機能です。
特に、従来TS系でハムバッカーとの相性に悩んでいた人や、TS9と808のどちらを選ぶか迷っていた人には強くおすすめできます。音の質感は非常に自然で、弾き手のタッチに素直に反応してくれるため、単なる“クローンペダル”の域を超えています。もしあなたがTS系の定番サウンドを求めつつも、もう少し柔軟に使いたいと感じているなら、Warm Audio Tube Squealerは間違いなくその答えになるでしょう。機能と筐体デザインの良さのわりに価格も良心的で、品質とコスパの両面で非常に満足度の高い1台です。
Tube Squealer:まとめ

Warm Audio Tube Squealerは、3つのTS系サウンドを完全再現しつつ、現代プレイヤー向けにアップデートされた“万能TSペダル”。ミックスノブ、ハムバッカー対応スイッチ、電圧ブーストなど、実際の演奏シーンをよく考えた設計が光ります。
特にハムバッカーでの扱いやすさは秀逸で、従来TSを敬遠していた人にこそ試してほしい1台。サウンドの厚み、操作性、そして使う楽しさ。どれを取っても完成度が高く、「TSの最終形」と言っても過言ではありません。
3種の伝説的回路を切り替えながら、自分だけの“理想のグリーン”を探す時間。Tube Squealerは、そんな楽しみを与えてくれるペダルです。
コメント