BOSS / ST-2 Power Stack 特徴と使用レビューについて

エフェクター

ギタリストにとって、自分の音色を作り出す機材選びは非常に重要です。特に「マーシャルサウンド」と呼ばれる太くて力強い音色は、多くのロックギタリストの憧れです。そのサウンドを手軽に再現できるエフェクターとして注目されているのが、「BOSS Power Stack ST-2」です。このペダルは、その名の通り「スタックアンプのようなサウンド」を目指して作られており、特に初心者から中級者に向けて設計された多用途なエフェクターです。
私自身も長年ギターを弾いてきた中で、このエフェクターに出会い、その特徴や使用感を徹底的に試してみました。この記事では、ST-2の魅力を体験を交えながら解説していきます。あなたのギターライフを充実させるヒントが見つかるかもしれません。

① BOSS Power Stack ST-2の特徴と基本情報

BOSS Power Stack ST-2は、スタックアンプ特有の厚みのある音色を再現するために設計されたエフェクターです。このペダルの最大の特徴は、手軽に「マーシャルアンプのような音」を作り出せる点にあります。特にロックやハードロック、さらにはメタルのようなジャンルで真価を発揮します。
このエフェクターの特徴的な機能の一つが「SOUNDつまみ」です。このつまみを中央の「DRIVE」位置に設定すると、BOSSらしい力強いドライブサウンドを得ることができます。さらに、SOUNDつまみを右に回すことで「ULTRA」モードとなり、マーシャルのスタックアンプをフルボリュームで鳴らしたかのような、超ハイゲインのディストーションサウンドを生み出します。一方で、SOUNDつまみを左に回すと「CRUNCH」モードとなり、粒立ちの良いファットなクランチサウンドを実現します。
また、ST-2にはBASSとTREBLEのEQコントロールが搭載されており、スタックアンプのような低音の厚みや高音の抜け感を自在に調整できます。特にスタジオでJC-120アンプに接続して使用した際、そのマーシャルライクな音の再現力に驚かされました。

●外観とデザイン
ST-2のデザインは、まさにマーシャルアンプを意識したもので、ブラックとゴールドのカラーリングが特徴的です。BOSSのペダルらしい頑丈な作りで、ステージやリハーサルでも安心して使用できる耐久性を備えています。また、コントロールノブは視認性が良く、シンプルなレイアウトで直感的に操作しやすい設計となっています。サイズもコンパクトでペダルボードに組み込みやすく、持ち運びにも便利です。

② 実際に使ってみた感想

このエフェクターを実際に使ってみて感じたのは、そのサウンドの多様性と、直感的な操作性の良さです。
サウンドのクオリティCRUNCHモードでは、ピッキングの強弱に対する追従性が非常に優れています。軽く弾けばクリーン寄りのサウンドに、強く弾けばしっかりと歪むというナチュラルな表現力が魅力的です。特にストラトキャスターを使用すると、そのダイナミックレンジの広さが際立ち、ブルースやクラシックロックに最適なトーンを得ることができました。
ULTRAモードでは、ハイゲインなディストーションが得られ、メタル系のリフやソロに最適です。ギブソンのレスポールを使用した際、太く力強いサウンドが際立ち、まるでマーシャルのスタックアンプをフルボリュームで鳴らしているかのような迫力を味わえました。
また、ピッキングのニュアンスやボリュームコントロールにも敏感に反応し、単なる歪みペダルではなく、演奏表現に応じた音色の変化が可能な点もこのエフェクターの魅力の一つです。
特にジャズコーラスとの相性は良く、スタジオにあるJC-120に接続した際、クリーンなアンプからでもスタックアンプらしい図太いサウンドを生み出すことができました。ジャズコーラスの硬質な特性を生かしつつ、しっかりとしたローエンドと抜けの良いハイエンドを作ることができる点も高評価です。
このように、ST-2はさまざまなギターやアンプとの組み合わせで、多彩な音色を実現できる点が大きな魅力と言えます。

③ ST-2の欠点と注意点

BOSS Power Stack ST-2は、マーシャルのスタックアンプのサウンドを再現するために設計されたペダルですが、実際に使ってみるといくつかの欠点や注意点があることがわかりました。ここでは、ST-2を使用する上で気になる点を詳しく解説していきます。

1. ハイゲイン時のノイズの多さ

ST-2の「ULTRA」モードでは、非常に強い歪みを得ることができますが、その反面、ノイズの量が多くなります。これは、高ゲインな歪みペダルではある程度仕方のないことですが、特にシングルコイルのギターではノイズが顕著に感じられます。

スタジオで試した際、アンプの設定やピックアップの種類によっては、演奏していない時に気になるレベルのホワイトノイズが発生しました。解決策としては、ノイズゲートを導入することが考えられます。例えば、BOSSの「NS-2」やISP Technologiesの「Decimator」などを併用することで、不要なノイズを効果的に抑えることができます。

2. ミドル帯域の不足

マーシャルサウンドの特徴といえば、分厚いミドルとタイトなローエンドですが、ST-2はミドルの出方がやや控えめです。特にバンドアンサンブルの中で使用すると、ギターの音が埋もれやすい傾向があります。

特に、ストラトキャスターのようなシングルコイルを搭載したギターで試した際に、中音域の存在感が不足していると感じました。対策としては、TS系のブースター(チューブスクリーマー系)や、BOSS SD-1(Super Overdrive)などのミドルを強調するペダルを前段に置くことで、アンサンブルの中でもしっかりとした音の輪郭を保つことが可能です。

また、アンプ側のEQを活用してミドルを補強するのも有効です。特にJC-120のようなフラットな特性を持つアンプでは、ST-2の特性と相まってミドルがさらに控えめになるため、アンプのミドルを上げるとよりバランスの取れたサウンドになります。

3. マーシャルアンプのクリーンチャンネルとの相性

ST-2は、クリーンアンプとの相性が非常に良く、特にジャズコーラスのようなクリーンなアンプでは素晴らしい結果を得られます。しかし、マーシャルのクリーンチャンネルに繋いだ場合、期待したほどのマーシャルらしさが得られないケースがありました。

これは、ST-2が完全なマーシャルのプリアンプシミュレーターではなく、クリーンなプラットフォームに対してマーシャル風のキャラクターを付与する設計になっているためと考えられます。マーシャルのクリーンチャンネルは、もともと中音域が強く、少しクセのある音作りになっているため、ST-2を通した際に過度にコンプ感が強まったり、音の分離が悪くなることがありました。

この問題を回避するには、ST-2をアンプの「リターン」端子(エフェクトループのリターン)に接続し、プリアンプ部分をバイパスして直接パワーアンプに信号を送るという方法があります。これにより、ST-2がプリアンプとして機能し、よりクリアなマーシャルライクな音を得ることが可能になります。

4. 低音の再現力の違い

ST-2の売りの一つは、マーシャルのスタックアンプ特有の「箱鳴り感」を再現する点ですが、実際に使用すると「低音の質感」が実際のスタックアンプとは異なると感じることがありました。

特に、大音量で鳴らしたマーシャルのスタックアンプが持つ「床を揺るがすような低音の押し出し感」は、ST-2単体ではやや物足りない部分があります。これは、ST-2が基本的にペダルであり、キャビネットの物理的な鳴りを完全に再現するのが難しいためです。

解決策としては、BOSSの「EQ-200」や「GE-7」などのイコライザーを併用し、低音域を少しブーストすることで、より迫力のあるサウンドにすることができます。また、アンプの設定を見直し、低音を少し増やすことで、バンドアンサンブルの中でもしっかりとしたボトムエンドを確保できます。

5. 「Power Stack」というネーミングの誤解

ST-2の名前には「Power Stack」という言葉が含まれていますが、実際には「超ヘビーなメタルサウンド」や「現代的なハイゲインアンプ」のような音作りではなく、どちらかというと「ヴィンテージ系のクランチサウンド」に強みを持つペダルです。

「マーシャルのスタックアンプのような音が手に入る!」というキャッチコピーから、より極端なヘビーサウンドを期待すると、やや拍子抜けするかもしれません。実際のところ、ハードロックやクラシックロック向きの歪みであり、モダンメタル向きの超ハイゲインディストーションではないため、その点は購入前に理解しておく必要があります。

ST-2にはいくつかの欠点がありますが、それらは適切なセッティングや組み合わせる機材によって補うことができます。

  • ハイゲイン時のノイズは、ノイズゲートを使用することで軽減可能
  • ミドル帯域の不足は、TS系ブースターやEQペダルで補強
  • マーシャルアンプのクリーンチャンネルとの相性は、リターン接続で改善
  • 低音の再現力は、EQの調整やアンプの設定で補う
  • 超ヘビーなメタルサウンドを求める場合は、別のエフェクターと組み合わせる

このように、ST-2は単体で万能なペダルではないものの、適切な機材との組み合わせやセッティングを工夫することで、非常に幅広い用途で活躍するペダルとなります。特に「ジャズコーラスと組み合わせてマーシャル系の音を再現したい」というニーズにはぴったりのエフェクターです。

④ 総評

BOSS Power Stack ST-2は、コンパクトなペダルながらもマーシャルのスタックアンプ特有のサウンドを再現することを目指したユニークなエフェクターです。実際に使ってみると、その多機能性と使いやすさが際立ち、特にクリーンアンプとの組み合わせでは非常に効果的なサウンドを得ることができました。

サウンドの多様性は、このペダルの最大の魅力の一つです。SOUNDつまみを調整することで、軽めのクランチから強烈なハイゲインディストーションまで幅広くカバーできるため、ジャンルを問わず活躍します。特にCRUNCHモードでは、ピッキングのニュアンスが素直に反映され、ブルースやクラシックロックに最適なトーンを生み出します。一方でULTRAモードでは、スタックアンプをフルボリュームで鳴らしたかのような迫力のあるディストーションが得られ、ハードロックやメタルにも対応できるポテンシャルを秘めています。

また、直感的な操作性も魅力的です。BOSSの伝統的なシンプルなデザインが採用されており、4つのノブで細かい音作りができるのは初心者にとってもありがたいポイントです。特にBASS/TREBLEのEQコントロールは、アンプやギターの特性に合わせて柔軟に調整でき、状況に応じた最適なサウンドを作り出すのに役立ちます。

しかし、ST-2にはいくつかの注意点もあります。まず、ゲインを上げた際のノイズの多さが気になる点です。特にULTRAモードではホワイトノイズが顕著になり、ノイズゲートを併用することで対策が必要になる場面もあります。また、ミドル帯域がやや控えめなため、バンドアンサンブルでは音が埋もれやすいことがあります。これを補うには、TS系のブースターやEQペダルを活用することでバランスを取るのが有効です。

さらに、「Power Stack」という名前から連想されるような「超ヘビーなモダンメタル向けのサウンド」を期待すると、やや違った印象を受けるかもしれません。実際のところ、このペダルはヴィンテージマーシャル系のクランチ~ハードロック向きのサウンドが得意であり、最新のハイゲインアンプのような極端なディストーションを求める場合は、別の選択肢を検討する必要があります。

総評として、ST-2は特にクリーンアンプとの相性が良く、マーシャルライクなサウンドを手軽に得られる優れたペダルです。ジャズコーラスのようなフラットなアンプに繋いでも十分にスタックアンプ風の音圧を感じることができる点は、多くのギタリストにとって魅力的でしょう。また、ブースターやEQペダルとの組み合わせによってさらに幅広い音作りが可能となるため、エフェクターボードに組み込む価値のあるペダルです。

最終的に、ST-2は単体で完璧なマーシャルサウンドを生み出すものではありませんが、適切な機材と組み合わせることで本領を発揮します。特に「ジャズコーラスでマーシャルのような音を出したい」「クリーンアンプでもパワフルなディストーションを得たい」といったギタリストにはぴったりのペダルでしょう。

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