Mad Professor Simble Overdrive Mk2 レビュー|トランスペアレント系の進化

エフェクター

「Simble Mk2」という名前を見たとき、まず最初に思ったのは「え、初代なんてあったの?」という素直な驚きでした。ギター機材にはそれなりに触れてきたつもりでしたが、このシリーズは完全にノーマーク。少し調べてみると、初代はおよそ10年前に登場し、トランスペアレント系の隠れた名機としてじわじわと支持を集めていたようです。

そんな中で登場したMk2は、オリジナルデザイナーによる回路設計の見直しや、現代的な使い勝手への調整が加えられたアップデートモデル。筆者にとっては完全に初体験となるSimble Overdriveシリーズでしたが、むしろ先入観ゼロで向き合えたのは良かったかもしれません。

この記事では、「前作との比較」ではなく、「このMk2が今の自分にとってどんなエフェクターだったのか」という体験を中心にお届けします。

Mad Professorとは?

出典:Mad Professor

Mad Professor(マッド・プロフェッサー)は、フィンランド発のブティックエフェクターブランド。オーバードライブ、ディレイ、リバーブなどを中心に、ギターサウンドにこだわるプレイヤーたちから高い評価を受けてきました。

創設者はBjorn Juhl(ビョルン・ユール)。彼のチューニングセンスと独自設計により、「音の質感」や「反応性」において他社製品と一線を画しており、多くのプロギタリストにも愛用されています。
近年は運営体制が変更されたものの、設計はフィンランドで継続されており、オリジナル開発者との連携も維持。今回のSimble Mk2も、そうした伝統と革新が融合したモデルです。

Simble Overdrive Mk2:第一印象

「Mk2」と聞いて、まず頭に浮かんだのは「えっ、初代なんてあったの?」という素直な驚きでした。筆者はそこそこギター機材に関心を持っているつもりでしたが、Simble Overdriveの初代については完全にノーマーク。調べてみると、10年ほど前にリリースされており、コアな層にじわじわと人気を集めていたようです。

今回のMk2は、その初代モデルをアップデートし、現代のプレイヤーに向けて設計し直されたリファインモデル。とはいえ、筆者にとってはこのシリーズ自体が初体験。だからこそ「前作と比べてどうこう」ではなく、「このペダルが今どんな音を出してくれるのか」という一点に集中して体験してみることにしました。

Simble Overdrive Mk2:コントロールの詳細

出典:Mad Professor

いわゆる「トランスペアレント・オーバードライブ」。つまり、ギターやアンプの音色を壊さずに、自然に歪みを加えるタイプのペダルです。

主なコントロール
●Sensitivity(センシティビティ)
ゲイン量、歪みとコンプレッションの深さを調整。クリーンブーストとしても使用可能。
●Accent(アクセント)
ピッキングアタックの強さや輪郭、明るさをコントロール。
●Contour(コンター)
プレゼンス的な役割を果たしつつ、全体のトーンバランスを整える。

一見すると直感的に思えるこれらのノブですが、実は定番の「Gain」「Tone」「Level」といった表記とは異なるため、初見では少々戸惑うかもしれません。特にAccentやContourは、他のエフェクターで見慣れない名称だけに、それぞれの働きを理解するまでは少し試行錯誤が必要です。

しかし、この3つのノブは非常にインタラクティブで、どれか1つを調整するだけでも全体のキャラクターが大きく変化します。シンプルな見た目に反して、かなり奥深い操作感があります。「触って学ぶ」タイプのペダルだと言えるでしょう。

Simble Overdrive Mk2:使用感、レビュー

ストラトキャスターを接続し、まずはSensitivityを絞った「クリーンブースト的」な設定から試してみました。音の輪郭がハッキリしていて、まるでアンプ自体のグレードが上がったような印象。

続いてSensitivityを中〜高域まで上げ、「甘く滑らかなオーバードライブサウンド」を試すと、音が前に出てくるのに耳に刺さらない。歪み量の増加というより、表現力が一気に増したように感じました。

特に印象的だったのは、ネックピックアップでも音が濁らず「もっさりしない」点。これは前作の弱点とされていた部分だそうですが、Mk2ではしっかり改善されていると感じました。

Simble Overdrive Mk2:高ゲイン設定でも破綻しない設定

次はAccentとContourを積極的に上げ、Sensitivityも最大に設定。「倍音豊かなリードトーン」を狙ったセッティングです。

驚いたのは、ここまで歪ませても音が潰れず、各弦の分離感が損なわれなかったこと。ピッキングの強弱やニュアンスもきちんと反映され、タッチに敏感なプレイヤーにはたまらない反応性があります。

さらに、Sensitivityを下げながらボリュームを上げれば、軽やかなドライブトーンも得られ、コードプレイにもマッチします。1台で幅広いサウンドを作れる柔軟性が魅力です。

Simble Overdrive Mk2:Q&A

Q. Simble Overdrive Mk2はどんなジャンルに向いていますか?
A. Simble Mk2は、クリーンからクランチ、そして滑らかなオーバードライブまで幅広く対応できるため、ブルース、ロック、ポップスなど多くのジャンルで使えます。特に「ギターの素の音を活かしたい」プレイヤーにおすすめです。

Q. 初代Simbleとの違いは何ですか?
A. Mk2は初代と比べて、ヘッドルームが広くなり、特にネックピックアップでの音の分離が改善されています。また、アクセントとコントロールの効き方が洗練されており、より繊細なトーンメイクが可能になっています。

Q. どんなギターと相性が良いですか?
A. ストラトキャスターのようなシングルコイルはもちろん、レスポールのようなハムバッカーにもマッチします。ContourノブでEQ調整ができるため、ギターごとの個性に応じて柔軟に対応できます。

Q. 価格に見合った価値はありますか?
A. 新品価格は約28,000円と決して安価ではありませんが、クリーンブーストからリードトーンまで幅広く対応できる音質と柔軟性を考えると、価格に見合った高いパフォーマンスを持っています。

Q. Simble Mk2はトゥルーバイパスですか?
A. はい、Simble Overdrive Mk2はトゥルーバイパス仕様です。トゥルーバイパスとは、ペダルをオフにしたときに信号が回路を通らず、ギターの原音がそのままアンプへ送られる仕組みのこと。これにより音痩せや余計なカラー付けを防げるため、ピュアな音を重視するプレイヤーにとっては重要なポイントとなります。

Q. トランスペアレント・オーバードライブってどういう意味?
A. 「トランスペアレント・オーバードライブ」とは、歪みを加えながらもギター本来の音色や演奏のニュアンスを損なわないタイプのペダルを指します。Simble Mk2はその代表的存在で、ギターやアンプのキャラクターを活かしながら、自然なサウンド変化を提供します。極端なEQやコンプレッションがないため、ピッキングの強弱やボリューム操作にも繊細に反応します。

まとめ:トランスペアレント系オーバードライブの決定版かも?

出典:Mad Professor

Simble Overdrive Mk2は、「音の美しさ」「タッチへの追従性」「セッティングの柔軟性」を兼ね備えた、非常に完成度の高いオーバードライブペダルです。初めて使った筆者でも、その音の馴染みやすさと深さにすぐ引き込まれました。

派手な効果ではなく、じわじわ効いてくる存在感。シンプルな外見ながら、内部には確かな職人技が込められています。ジャンルや機材を問わず、さまざまな場面で活躍できるポテンシャルを持っています。

新品価格はおよそ28,000円。決して安いとは言えませんが、このサウンドクオリティと信頼性を考えると、むしろコストパフォーマンスは高いと言えるでしょう。
Simble Mk2――これは今後も手放せない1台になりそうです。

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