JCM900がペダルで帰ってきた?その驚きと期待感
「え?JCM900のペダル?」最初にその名前を見たとき、正直少し戸惑いました。なんせJCM900といえば、マーシャルの中でも微妙な立ち位置にいるモデル。ファンもいれば、アンチも多い。
でも、ずっとこのアンプを愛用してきた自分にとっては、むしろ「よくぞ出してくれた!」という気持ちでした。NAMM 2025で発表されたこのJCM900 Drive Pedal。マーシャルが公式に、あの90年代の空気をまとうアンプのサウンドを再現しようとする姿勢に、ちょっと胸が熱くなったんです。
コンパクトエフェクターで「900っぽさ」をどこまで再現できるのか。自宅でもリハでも手軽に“あの音”が出せるなら、これは試してみる価値アリです。
JCM900ペダルの構造とコントロール:ツマミで作るマーシャル感

ペダルの見た目は「さすがマーシャル」と言いたくなるような存在感。マットブラックの筐体に、LEDがフットスイッチ周囲に輝く仕様。ステージ映えもするし、所有欲も満たしてくれる作りです。
コントロールはシンプルながらも実用的。Gain、Tone、Volume、そしてContour。このContourというツマミが、このペダル最大の特徴です。回すことで中域の質感が変わる、いわゆるミッドシフト的な役割を果たしてくれます。
- Contourを下げれば中域を抑えたドンシャリ気味のサウンドに。
- 上げればミドルが前に出る、まさに「これぞマーシャル」な押し出し感。
このツマミひとつで、JCM900の持つ「クリーンからハイゲインまで対応する守備範囲の広さ」がしっかりと表現されているなと感じました。
実際の音はどうか?クリーンからハイゲインまで試してみた
さて、音がどうか。ここが一番気になるポイントですよね。クリーンアンプ(今回はEVH 5150III)にこのJCM900ペダルを繋いで試してみました。
まずはGain控えめ、Contour中間、Toneも12時で様子見。
「ん?思ったよりも“モダン感”あるな」
でも、そこから少しずつツマミを追い込んでいくと、だんだんと馴染みのあるサウンドに近づいていきます。特にContourを上げた時の、やや粘るような中域の太さ、これはJCM900のアンプと通じるものがあります。
Gainは意外と控えめ。フルにしても爆発的なハイゲインではなく、あくまで「ロックらしい」レンジに収まっています。そこがまた、JCM900らしいところでもあるんですが。

アンプとの相性と使用シーン:これ一台で足りるのか
このペダルは、あくまで「アンプ前段で使う」ことを想定したドライブペダル。プリアンプとして使うには出力が足りない印象です。
ただし、クリーンチャンネルを持つアンプとは相性良好。特に中域がフラットなアンプ(例:FenderやEVH)に繋ぐと、マーシャル的な音像がガラッと乗っかる感じがします。
自宅練習や小規模なライブで、「900っぽい音が出せればいい」という用途にはピッタリです。逆に、アンプの歪みにプラスする用途にはそこまで向いていないかもしれません。あくまで“アンプの代わり”になるようなポジション。
使って感じたメリット・気になる点:完成度は高いけど…
良かった点は何よりも“あの音”が手軽に得られること。ペダルサイズで、しかもバッテリー駆動にも対応。マーシャルのペダルらしく、作りもしっかりしています。
Contourツマミによる音作りの幅も想像以上で、これ一台で「JCM900の守備範囲の広さ」がだいぶ表現できます。Toneを上げすぎると少し耳に痛い音になることもありますが、それも含めて「らしさ」かなと。
一方、気になったのは“もうひと味”足りないところ。オリジナルの900アンプと比べると、どうしても音の「奥行き」や「張り出し感」が物足りなく感じます。とはいえ、それは比較の話。価格とサイズを考えれば、十分以上の再現度です。

価格評価と他ペダルとの違い:900好きなら“買い”?
定価はおよそ29,700円(※時期や店舗によって変動あり)。「マーシャル公式の新作ペダル」「JCM900を再現」というブランド的な価値を加味すると、この価格は比較的納得できる範囲ではないでしょうか。
とはいえ、冷静に市場全体を見渡すと、同価格帯には名の知れたオーバードライブ/ディストーションペダルがひしめいています。たとえば BOSS DS-1X や Friedman BE-OD、さらにはJHSの製品など、同価格帯でより多機能なモデルも珍しくありません。トーンスタックに3バンドEQを備えるようなペダルと比べてしまうと、シンプルな操作系のJCM900ペダルはやや“やれること”が限られている印象を受けるかもしれません。
ただし、このペダルの価値は“JCM900の音に近づける唯一無二の存在”という点に集約されます。
これは単なる歪みペダルではなく、「90年代のロック」「バンドサウンドに埋もれず抜ける音」「あの時代の中域感」にピンとくる人には、唯一無二の存在になる可能性があります。逆に言えば、そもそもJCM900のサウンドが「ちょっと中域が出すぎる」「高域がギラつく」など、苦手なタイプであれば、やはり他のオーバードライブやプレミアム系ディストーションの方がフィットする可能性も。
さらに、マーシャルが公式に手がけたことで得られる安心感もポイントのひとつ。公式ペダルという意味では、これまでフェンダーやメサブギーなどが出していた「公認サウンド」シリーズと同様、ファンの心をくすぐる存在でもあります。
結論として、このペダルの価格に対しての価値をどう評価するかは、「JCM900の音をどれだけ求めているか」にかかってきます。
音作りに時間をかけてきたJCM900ユーザーにとっては、自宅練習や宅録における“セカンド・チョイス”として活躍してくれるでしょうし、900を持っていない人にとっては、“Marshall直系の音”を比較的リーズナブルに手に入れる入り口としても魅力的です。
Q&A

Q:JCM900のアンプっぽさ、ちゃんと出てるの?
A:これは思わず「おっ」と声が出るレベルです。完全に“JCM900そのまま”ってわけではないけど、中域のザラッとした感じや歪みの粒立ちはしっかり再現されてますね。
アンプと並べて比べるとちょっとレンジの狭さは感じるけど、あの“ややドライなブリティッシュサウンド”はかなり近い。
Q:どんなアンプと相性がいい?
A:クリーンがしっかり出るアンプが合いますね。
たとえばMarshall OriginやJC-120、FenderのTwin Reverbとか。
歪みが深めのアンプの前段に入れるとキャラがぶつかっちゃうかも。JCM900ペダルは「クリーン+これだけで音を作る」のが向いてる気がします。
Q:Contourノブって結局なに?
A:これは“中域の個性をどう出すか”を調整するノブです。
下げるとドンシャリ、上げると中域前に出ます。
つまり、モダン寄りにもクラシック寄りにも寄せられるわけで、バンドの中でどう抜けるかに合わせてコントロールできるのがありがたい。
Q:どんな人におすすめ?
A:「JCM800はちょっと硬いけど、900のしなやかさが好き」という人、まさにドンピシャ。
あと、90年代の音、特にグランジとかパンク寄りが好きな人にはちょうどいいと思う。
普段マーシャルっぽい歪みが足りないな…と思ってる人にも、1台試してほしいですね。
Q:どのジャンルに向いてる?
A:パンク、グランジ、90年代のUKロック、あと意外とオルタナ系にもハマります。
歪みの解像度が高すぎないから、コード弾きでも潰れず抜けるし、単音リフも無骨に響いてくれる。モダンメタル向きではないけど、“ちょい泥臭いロック”やる人にはかなりツボなんじゃないかと。
Q:JCM800やDSLのペダルと何が違う?
A:JCM800ペダルは“硬派で直線的なハイゲイン”、DSLは“ややモダンで滑らかな歪み”、900はその中間って感じです。
900特有の“ほどよくコンプ感があって、少しだけもっちりした中域”が好きな人はこれ一択ですね。エッジの立ち方がちょっと粘るというか…あれがクセになる。
Q:サイズがちょっと大きいのが気になるんだけど?
A:うん、それはちょっと思う(笑)MXRサイズじゃないから、ボードに乗せると「場所取るなぁ」ってなる。
でもそのぶん筐体は頑丈だし、ノブも回しやすいし、LEDの視認性もいい。ライブで雑に踏んでもびくともしない安心感はあります。
まとめ:愛すべき“賛否両論”をペダルで体験するということ

JCM900といえば、古くから「賛否両論」の代名詞のような存在。でも、それってつまり“語られ続けてきた”ということでもあるんですよね。
今回ペダルとして登場した Marshall JCM900 Drive Pedal は、そのキャラクターをしっかり踏襲しつつ、現代的な使いやすさや堅牢さも加わった製品でした。音の方向性としてはややジャリっとしていて、歪みのエッジが立っていて、ミドルに独特のクセがある——まさに“あのJCM900”です。
実機と完全に同じかと言われればもちろん違うけれど、「JCM900の味わいが好きなんだよなあ」と思ってる人にはきっと刺さる一本。シングルコイルでもハムバッカーでも、クリーンアンプでも宅録環境でも、意外と柔軟に活躍してくれます。
ペダルボードのなかに、“あの頃のロック感”を宿したいなら、この選択肢はかなりアリです。
ちょっと大きめの筐体も「Marshallらしさ」として、許せてしまう不思議。
気づけば、手元に置いておきたくなるような、そんな1台かもしれません。

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