エレキギターを演奏する上で、歪みのキャラクターはサウンドメイクの要となる重要な要素のひとつです。特にメタル系のプレイヤーにとっては、深く歪みながらも明瞭さを保ち、リフやソロがしっかりと際立つサウンドが求められます。そんなニーズに応えるべく登場したのが、MXR Fullbore Metalです。
このペダルは、その名の通りメタルサウンドに特化した強力なディストーションペダルであり、圧倒的なゲインと多彩な音作りを可能にするEQコントロールを備えています。さらに、ミッドスコープスイッチやノイズゲート機能といった、メタルギタリストにとって嬉しい機能が搭載されており、プレイヤーの理想のサウンドを実現するための強力な武器となります。
本記事では、Fullbore Metalの基本スペックから、具体的な音作りのコツ、実際に使用した際の印象、さらには他のメタル向けディストーションペダルとの比較まで、徹底的に掘り下げていきます。メタルギターサウンドを追求するプレイヤーにとって、このペダルがどれほどの実力を持つのか、その魅力と実用性を詳しく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
①MXR Fullbore Metal について

圧倒的なハイゲインディストーションペダルMXR Fullbore Metalは、その名の通りメタルサウンドに特化したディストーションペダルです。一般的なオーバードライブペダルとは異なり、極端に歪んだ音を生み出すことを目的としており、特にスラッシュメタルやデスメタル、モダンメタルなどのジャンルで威力を発揮します。MXRはアメリカの老舗エフェクターブランドとして知られ、多くのギタリストに愛用されていますが、このFullbore Metalはその中でも特にアグレッシブなキャラクターを持っています。
このペダルの特徴的な点として6つのコントロールノブ、ミッドスコープスイッチ、ノイズゲート機能が挙げられます。それぞれがメタルサウンドのために設計されており、細かな音作りが可能です。本記事では、Fullbore Metalのサウンドやコントロール、実際の使用感、そして他のディストーションペダルとの比較について詳しく解説していきます。
②圧倒的なサウンド。Fullbore Metalの基本スペックとコントロール
Fullbore Metalの最大の魅力は、その凶暴なまでの歪みと、細かく調整できるEQセクションにあります。まず、歪みの基本的なキャラクターとしては、非常にアグレッシブでエッジの効いたディストーションサウンドを持ちます。特に高音域が強調されたザクザクとしたトーンが特徴的で、速弾きやブリッジミュートを多用するプレイヤーにとっては理想的な歪みを得られます。
このペダルには6つのコントロールノブが搭載されています。

・Gain:歪みの強さを調整するノブですが、最小でも十分に歪んでおり、最大にすると極端なハイゲインサウンドになります。
・Volume:エフェクトの出力音量を調整する役割を果たします。
・Bass:低音域の調整を担当し、厚みのある重低音を作るのに適しています。
・Mid:中音域をコントロールし、メタルらしいドンシャリサウンドを作る際に非常に重要なノブです。
・Treble:高音域の調整を行い、カッティングやソロ時の音抜けを左右します。
・Frequency:ミッドレンジの特定の周波数を選択して強調または削減できる機能で、好みのメタルサウンドを作るのに役立ちます。
また、Fullbore Metalには「Scoop(スコープ)」スイッチが搭載されており、これをオンにすると中音域が大きく削られ、スラッシュメタルやモダンメタル向けの極端なドンシャリサウンドが得られます。しかし、プレイヤーによってはスコープの効きすぎを感じることもあり、適宜バランスを調整することが求められます。
さらに、内蔵の「Noise Gate(ノイズゲート)」機能も大きな特徴です。これはハイゲインペダル特有のノイズをカットし、タイトなサウンドを維持するのに役立ちます。特にストップ&スタートの多いメタルリフを弾く際に非常に便利で、不必要なノイズを抑えることができます。
Fullbore Metalの価格とコストパフォーマンス
Fullbore Metalの新品価格は約18,000円〜24,000円程度で、中古市場では10,000円前後で取引されています。この価格帯はメタル系ディストーションペダルとしては標準的で、ボスの「Metal Zone」やElectro-Harmonixの「Metal Muff」と同じレンジに位置します。
この価格で得られるサウンドのクオリティを考えると、コストパフォーマンスは非常に高いと言えます。特にノイズゲートやミッドスイープ機能を搭載している点は大きなアドバンテージで、追加のノイズゲートペダルを用意しなくても、タイトなリフを維持できるのは大きなメリットです。
また、Fullbore Metalはコンパクトな筐体ながら、頑丈なアルミ製ボディを採用しており、ツアーなどの過酷な環境でも耐えられる設計になっています。そのため、持ち運びやすさも優れています。
使用してみたわかった良い点、悪い点
MXR Fullbore Metalを実際に使用してみると、その強烈なハイゲインサウンドとメタル特化の設計が際立ちます。まず第一に、歪みの強さが圧倒的で、ゲインをゼロにしても十分に歪んでおり、少しでも上げるとすぐに本格的なメタルサウンドになります。ブリッジミュートのザクザクしたリフや、鋭いカッティングがしっかりと前に出るので、スラッシュメタルやデスメタルのプレイヤーにとってはまさに理想的な歪みを提供してくれるでしょう。
また、EQセクションの調整幅が広く、特にミッドレンジのコントロールが細かくできる点が優れています。一般的な3バンドEQに加えて、ミッドスイープの機能があるため、欲しい帯域を強調したり、スコープスイッチを使って大胆なドンシャリサウンドを作り出すことも可能です。バンドアンサンブルの中で埋もれないように、しっかりとしたミッドレンジを確保しながらも、スラッシュメタルらしいアグレッシブなトーンを作れるのは大きな魅力でした。
さらに、内蔵されているノイズゲート機能も非常に便利で、ハイゲイン環境でも不要なノイズをしっかりと抑えてくれます。特にストップ&スタートの多いブレイクダウンやモダンメタル系の演奏では、クリーンなミュートが求められるため、この機能が内蔵されているのは大きなメリットです。これにより、別途ノイズゲートペダルを用意しなくても済む点は、ペダルボードの省スペース化にもつながります。
しかし、一方でデメリットも感じました。まず、このペダルの音作りは極端で、メタル以外のジャンルには適していません。ハイゲインを活かしたロックやハードロックでの使用を試みましたが、どうしても鋭すぎる音になり、バランスが取りにくい印象を受けました。さらに、スコープスイッチをオンにすると、極端に中音域が削られすぎてしまい、バンドアンサンブルでは逆に埋もれやすくなることもありました。
また、高音域が非常に強調されているため、設定によっては耳に刺さるような鋭いサウンドになりがちです。特にシングルコイルピックアップのギターではその傾向が顕著で、ハムバッカーのギターを使うか、トレブルを抑えめに調整する必要があると感じました。
価格に関しては、新品で20,000円前後、中古で10,000円程度と比較的手の届きやすいレンジにあります。この価格でハイゲインペダルに求められる機能がすべて詰め込まれている点を考えると、コストパフォーマンスは非常に高いと言えます。しかし、ジャンルの幅が狭いため、汎用性を求めるプレイヤーには向かないかもしれません。
総じて、MXR Fullbore Metalは、特定の用途には非常に強力な武器となるエフェクターです。特にメタルギタリストには魅力的な機能が揃っており、ノイズゲートやEQの柔軟性を活かせば、自分の好みに合わせたアグレッシブなサウンドを作り出せます。ただし、扱い方を誤ると埋もれてしまう危険性もあるため、しっかりとした音作りのスキルが求められるペダルだと感じました。
他のディストーションペダルとの比較

Fullbore Metalは、同じメタル向けのペダルである「Boss Metal Zone」とよく比較されます。Metal Zoneはより広いジャンルで使いやすい汎用性の高さを持ちますが、Fullbore Metalはより攻撃的で極端なメタルサウンドを追求するプレイヤーに適しています。他ユーザーの声を聴くとやはり、より極悪なメタルサウンドを作りたいならfullbooremetalが良い意見があります。
また、Electro-Harmonixの「Metal Muff」と比較すると、Metal Muffはややクラシックなメタルサウンドを志向するのに対し、Fullbore Metalはよりモダンなメタル向けの設計になっています。
まとめ
MXR Fullbore Metalは、メタルギタリストにとって非常に魅力的なディストーションペダルです。その圧倒的なハイゲインサウンドと、緻密な音作りを可能にするEQコントロールが特徴で、特にモダンメタルやスラッシュメタルを演奏するプレイヤーには理想的な選択肢となります。
このペダルの強みとして、スコープスイッチによる極端なミッドカット機能があり、これによってアグレッシブで抜けの良いサウンドを作ることができます。また、内蔵されたノイズゲートはハイゲイン時のノイズを抑え、タイトで引き締まったリフを実現するため、追加のノイズゲートペダルを用意する必要がないのも大きなメリットです。
一方で、極端に歪む性質上、音作りの自由度はやや限られます。低めのゲイン設定でも十分な歪みが得られるため、軽めのオーバードライブサウンドには向かない点は注意が必要です。また、スコープスイッチを多用しすぎると音が痩せてしまう可能性もあるため、バンドアンサンブルの中でのバランス調整が求められます。
価格面では、約2万円前後と比較的手の届きやすい範囲にあり、中古市場でも手頃な価格で流通しているため、コストパフォーマンスの面でも優れた製品と言えます。他のメタル向けディストーションペダルと比較しても、よりモダンなサウンドに特化しており、特にミッドレンジの調整幅が広いため、独自の音作りを追求したいプレイヤーには最適です。
総じて、Fullbore Metalは、メタル特化型のエフェクターとして唯一無二のサウンドを持ち、極限まで歪ませた攻撃的なギターサウンドを求めるプレイヤーにとって頼れる一台となるでしょう。音作りの際には、EQの調整やスコープスイッチの活用を慎重に行い、自分のスタイルに最適なセッティングを見つけることが鍵となります。メタルサウンドを極めたいギタリストにとって、間違いなく検討する価値のあるペダルです。
コメント