
NUXといえば「コスパ」のような印象が強いメーカーですが、そんなNUXが今回またしても意欲的な製品を投入してきました。
その名も「Amp Core Studio」。
IRキャビネット対応、PC接続でのエディット可能、そして小型ながらセンドリターンも搭載という、正真正銘の”ALL IN ONE”な小型アンプモデラーペダルです。
思わず「これはまるでゲーム機みたいだ」とツッコまずにはいられなかった本機、その中身は果たして実力派なのか、それとも見た目倒しか?実際に触れて検証してみましょう。
NUX Amp Core Studio:製品概要

- 商品名:NUX Amp Core Studio
- 価格:新品 18,000円前後
- 軽量かつコンパクトな筐体で持ち運びやすい
- 鮮やかなフルカラー流動画面ディスプレイ搭載
- 専用PCエディターソフトで設定の詳細編集が可能
- USB-C接続対応で現代的な仕様
- ヘッドホン端子やDI出力を装備
- MIDI操作対応 / センドリターン / ノイズゲート / グラフィックEQ内蔵
このAmp Core Studio、まず目を引くのはやはりその外観とサイズ感でしょう。非常にコンパクトで、見た目は一瞬ゲーム機かと思うほどスタイリッシュ。それでいて中身はかなり本格的です。センドリターンやDI出力、MIDI対応など、一般的なペダル型モデラーでは省かれがちな機能が、この小さな筐体にしっかりと詰め込まれています。
さらに、ディスプレイにはフルカラーの視認性の高い画面が採用されており、PCエディターを使えば細かな設定まで自在にカスタマイズ可能。USB-C端子を備え、現代的なPC環境との親和性もばっちりです。これだけの仕様を、このサイズと価格で実現している点は驚きで、まさにNUXらしい「コスパ全振り」な設計思想が感じられます。
小型軽量という特徴に惑わされがちですが、実際に使ってみると、その堅牢な筐体と高い機能性にプロフェッショナルも納得できる内容が詰まっていることがよく分かります。見た目とスペックのギャップに思わずうなってしまう、そんな完成度の高いモデルです。
NUX Amp Core Studio:UIと操作性

フルカラー画面で直感的な操作性
Amp Core Studioには高解像度のフルカラー画面が搭載されており、各アンプモデルの切り替え時に画面がダイナミックに変化します。これにより、ライブ中でも自分が今どのアンプモデルを使用しているのかをひと目で確認でき、非常に安心感があります。各パラメーターも色分けされて表示されるため、明るいステージ上でも視認性が高く、操作ミスを最小限に抑えることができます。
また、USB-C接続を通じて使用する専用のPC用エディターソフトも非常に秀逸です。アンプモデルやIRキャビネットの細かい設定はもちろん、パッチの保存・読込み、グローバル設定の変更まで可能。初心者にとっては視覚的に分かりやすく、上級者にとっても細部まで詰められる自由度があります。
さらにサードパーティ製のIRファイルにも対応しているため、自分の好みに合わせて音作りを追い込むことも可能。最新のPC環境との親和性も高く、今後のファームウェアアップデートによる機能追加も期待できます。
シーン切り替えでライブにも柔軟対応
Amp Core Studioの大きな特徴のひとつが、シーン切り替え機能です。ひとつのパッチの中に最大3つまで異なるアンプ+IR設定(=シーン)を保存でき、ライブ中などで瞬時に音色を切り替えることが可能です。これはLine6の「スナップショット」機能に近く、1曲の中でクリーン・クランチ・リードと音を分けたいプレイヤーには非常に重宝する機能です。
初期設定ではシーン1と2のみが有効ですが、グローバル設定を変更すればシーン3も有効化可能。演奏スタイルに応じた柔軟な使い方ができる点が魅力です。なお、フットスイッチの長押しや切り替え方法には少し慣れが必要ですが、一度覚えてしまえば迷うことなく扱える操作系になっています。
小さな筐体にこれだけのUIと柔軟性を詰め込んでいる点は、まさにNUXらしい実用的な設計と言えるでしょう。
NUX Amp Core Studio:サウンドチェック

クリーン系アンプの完成度
Amp Core Studioに収録されているクリーン系のアンプモデルは、想像以上にリアルなサウンドを鳴らしてくれます。特に「Deluxe Reverb」や「AC30」といったクラシックなクリーンアンプを再現したモデルは、ヘッドルームの広さやきらびやかな高域の質感まで、しっかりと再現されています。
シングルコイル搭載のストラトやテレキャスターとの相性も良好で、アルペジオやカッティングのような繊細なプレイでも、音がつぶれずにしっかりと抜けてきます。ペダルの乗りも良く、ODやコーラスなどを組み合わせたときの反応もナチュラル。ペダルプラットフォームとしても非常に優秀です。
歪み系・ハイゲイン系の実力
一方で、歪み系やハイゲイン系アンプモデルも豊富に揃っており、「Plexi」「Rectifier」「VH4」など、モダンハイゲインファンにも嬉しいラインナップが揃っています。ただし、純正プリセットの段階では全体的にややマイルドなセッティングが多いため、そのままだと少し物足りなさを感じる場面も。
しかし、ここで威力を発揮するのがIRの差し替えやブースターとの併用です。特にBOSSのSD-1など定番オーバードライブをフロントに置いてプッシュしてあげると、グッと引き締まったトーンになり、低音の押し出し感と高域のエッジが際立ってきます。
ピッキングへの追従性も良好で、速いフレーズやミュートプレイでも反応が遅れることなく、しっかりとついてきてくれる感覚があります。「プリセットで判断するのは早い、IRを変えて、SD-1を挿せばにやける音になる」——まさにその言葉通りの実力派ペダルです。
NUX Amp Core Studio:想定使用シーン

ライブ現場での頼れる相棒
Amp Core Studioは、ライブ現場で非常に頼れる存在となります。まず注目したいのはその筐体サイズ。手のひらサイズとも言えるほど小さく、エフェクターボード内の限られたスペースにも難なく収まります。にもかかわらず、センドリターンやDI出力をしっかり内蔵しており、通常は中〜大型マルチにしか見られない機能をしっかり網羅。これによって外部エフェクトとの組み合わせも自由自在です。
また、メイン機材にトラブルがあった場合でも、即座に代役をこなせるバックアップ機材としても優秀です。USB接続によるファームアップやエディット機能を使えば、あらかじめライブ用の設定を作り込んでおくことも可能で、ステージ上での不安要素をひとつ減らしてくれる存在といえるでしょう。
自宅練習・レコーディングでの活用
自宅での練習やレコーディング用途においても、Amp Core Studioはその実力を発揮します。USB経由でPCと接続すれば、DAWに48kHz/32bitで高品質な音声を直接録音することが可能。IRやアンプモデルの変更、EQの微調整など、すべてをPC上で視覚的にコントロールできるため、自宅でも本格的な音作りが行えます。
また、ヘッドホン出力を備えているため、夜間のサイレント練習にも対応。マンションや住宅密集地でも気兼ねなくギターを楽しむことができる点は、日常使いの面でも非常に大きなメリットと言えます。さらに、細かい音作りに集中したいときには、専用エディターソフトを活用することで、ミリ単位のサウンド調整も可能です。
NUX Amp Core Studio:良かった点・惜しい点
良い点(メリット)
まず注目したいのは、その価格からは想像できないほどの多機能性です。18,000円という価格帯ながら、26種類もの高品質なアンプモデリングを搭載しており、それぞれが異なるキャラクターを持っているため、ジャンルを問わず幅広いプレイヤーに対応可能です。
操作面でも非常に優れており、視認性の高いフルカラー画面と、専用のPCエディターソフトによって直感的かつ詳細な音作りが可能です。エディターではアンプモデルやIRの選択、EQの微調整など、音の細部にまでこだわった調整が行えるため、自分好みのサウンドをしっかり作り込むことができます。
さらに、サードパーティ製IRの読み込みにも対応しているため、既存の音色に満足できない場合でも柔軟に対応可能。接続端子も充実しており、センドリターン・MIDI・USB・ヘッドホン出力・DIアウトと、スタジオユースからライブ現場まで幅広い用途に対応できる設計です。
惜しい点(デメリット)
プリセットの音作りはマイルド寄り
まず気になったのは、初期プリセットのサウンドキャラクターが全体的にかなりマイルドな点です。特にハイゲイン系アンプを期待しているユーザーにとっては、物足りなさを感じるかもしれません。「Brown Sound」や「VH4」といったプリセット名にも関わらず、実際の音はゲイン控えめで、ローエンドの迫力やエッジの効いたトーンがやや希薄に感じられます。そのため、多くのユーザーが最初に行うのは、ゲインやEQの微調整、あるいはIRキャビネットの差し替えです。特にBOSS SD-1などのオーバードライブを前段に置くことで、ようやく納得のいくサウンドに仕上がるといった印象があります。
シーン切り替え機能の癖
続いてシーン切り替え機能にも少しクセがあります。本機では3シーンモードに対応しているものの、初期状態では2シーンしか有効になっておらず、グローバル設定から明示的に有効化する必要があります。加えて、シーンの切り替え時にその状態が視覚的に明確に表示されるわけではないため、ライブなどの実戦環境で活用するには事前にサウンドの違いをしっかり確認しておくことが求められます。
センドリターン運用時の注意点
センドリターン機能に関しては便利な一方で、運用にはいくつか配慮が必要です。とくにリターン側に空間系エフェクトをつなぐ場合、機器との相性やレベル差、インピーダンスの違いによってノイズが発生したり、音質が痩せたりするケースがあります。実際の運用では、リターン入力のレベル調整や信号のバランスを丁寧に整える必要がありました。
コンパクト筐体ゆえの配線上の工夫
もう一点、気になったのが筐体サイズに起因する配線上の問題です。Amp Core Studioは非常にコンパクトであるがゆえに、センド・リターンを含む複数のパッチケーブルを接続すると、他のジャックやスイッチとの干渉が起きやすくなります。特にエフェクトボードに組み込む際には、スリムなL字ケーブルを選んだり、配線順やレイアウトを事前に工夫する必要があると感じました。
総じて高い対応力、だがユーザーの工夫は必要
ただし、これらの点はすべて本機が高機能だからこそ起きる課題であり、設定や環境に応じて十分に対処可能です。逆にいえば、こうした仕様を理解し、手を加えながら使いこなすことで、自分だけの最適なアンプモデリング環境を構築できる楽しさがあるとも言えます。一定の経験と機材理解があるユーザーにとっては、その柔軟性と拡張性こそが大きな魅力となるでしょう。
NUX Amp Core Studio:こんな人におすすめ

NUX Amp Core Studioは、特に以下のようなプレイヤーに強くおすすめできます。
サブ機としての信頼性を求めるライブプレイヤー
ライブ現場での予備アンプやトラブル時の保険として、信頼できるサブ機材を探している人にはうってつけです。軽量で小型ながらもセンドリターンやDIアウトなど必要な機能をすべて備えており、万が一の際にも安心して使用できます。
自宅練習や録音でも本格派を目指す人
静かな環境で高品質なギターサウンドを楽しみたい人、自宅でしっかり音作りをしたい人にも最適です。USB経由での録音やソフトウェアでの詳細編集ができるため、宅録環境との相性も抜群です。
ハイゲイン好きでIR運用が得意な中・上級者
高精度なIRキャビ対応や、豊富なアンプモデルを活かして自分だけのサウンドを作り込みたいプレイヤーにも適しています。特にSD-1などのブースターを絡めての運用に慣れている人にとっては、その真価を最大限に引き出せるでしょう。
NUX Amp Core Studio:まとめ
やっぱりNUX、やってくれました。
見た目はおもちゃのように可愛らしく、手に取った瞬間は「大丈夫かな?」と不安になるかもしれません。しかしその実力は完全にプロ仕様。搭載された26種類のアンプモデルはどれもリアルで、IR対応やEQ、センドリターンなどの機能を活かせば、ライブやレコーディングでの本格使用にも十分耐えうるポテンシャルを持っています。
特に、シーン切り替え機能やUSB経由のエディター、サードパーティIRの読み込み対応など、音作りにこだわるユーザーにとって嬉しいポイントが満載。単なるサブ機としてではなく、メイン機材としても活躍できる「小さな巨人」と言える存在です。
また、ZoomやLine6のような「マルチストンプ型」とは異なり、本機はあくまで「アンプモデリング特化型」。余計なエフェクトに惑わされず、自分の好きなペダルと組み合わせながら、土台となるアンプサウンドにしっかりこだわる人にとっては、非常に魅力的な選択肢となります。
機能面では申し分ないものの、プリセットの調整やセンドリターン使用時の配線工夫など、多少の知識や慣れが必要な場面もあるため、ある程度の経験を持ったプレイヤーに特におすすめしたいモデルです。とはいえ、それを上回るだけの柔軟性と価格以上の価値がこのペダルには確かに存在しています。

コメント