
Universal AudioのUAFXシリーズに新たに加わった「Lion ’68 Super Lead Amp」。伝説のマーシャルPlexiサウンドを一台のペダルに詰め込んだこのモデルは、果たして本物のマーシャルの代わりになり得るのか?
チューブアンプ気質の筆者が、実際の音・操作感・使い勝手をじっくりと確かめながら、その可能性と魅力を徹底検証してみました。スタジオ、自宅、ライブハウスで使用した体験に基づいてお届けします。
Lion ’68 Super Lead Amp:特徴「Plexiの魂を詰めたアンプ・イン・ア・ボックス」

出典:hookup.co.jp
UAFX Lion ’68は、1968年製のMarshall Super Lead、Super Bass、そして「Brown Sound」系の3つのアンプモードを搭載した本格派アンプモデリングペダルです。Universal Audioが誇る高精度なモデリング技術によって、あの伝説的なPlexiトーンを極限まで忠実に再現。クラシックロック、ハードロック、そしてモダンロックまで、多くのギタリストにとって理想的なトーンがこの一台に凝縮されています。
外観はUAFXシリーズに共通するクラシカルかつ高級感のある仕上がり。Volume 1 & 2の独立したゲインコントロールをはじめ、3バンドEQ(Bass, Mid, Treble)、Presence、ルーム感を加えるRoomノブ、さらにヴィンテージEPブーストを再現したBoostノブも搭載。これらのコントロールにより、直感的かつ緻密な音作りが可能です。実際、手元でパッと音を整えられる操作性は、スタジオ作業の中でも重宝しました。
さらに、6種類のキャビネット・シミュレーションを標準搭載。Basket Weave 4×12やGreenback 25/30など、有名なキャビをリアルに再現し、マイクやルームのキャラクターも細かくシミュレート。アプリ連携による拡張性も高く、ノイズゲートや4ケーブルモード設定なども簡単に操作できます。自宅で鳴らすときはRoomノブの効果が絶妙で、“部屋鳴り感”が自然に足され、録音にもそのまま使えるクオリティです。
Lion ’68 Super Lead Amp:実機レビュー「Marshall本家との比較と驚きの完成度」

出典:hookup.co.jp
Marshall 1987x(50W Plexi)を基準に、Lion ’68のサウンドとレスポンスを徹底的に比較してみました。その結果、Lion ’68が持つ完成度の高さに驚かされることとなりました。
音の密度と反応のリアルさ
まず、音の密度とサステインの質感が非常に近く、空気の振動を感じるような“押し出し感”があります。ピッキングへの反応も素晴らしく、速いフレーズでは瞬時にニュアンスを拾い、ゆったりしたアルペジオでは丁寧に響きを再現してくれます。さらに、ギターのボリューム操作による微細な変化にも敏感に反応し、アンプ本体を操作しているかのような自然さがあります。
「Brown」モードの圧倒的な歪み再現力
特に感動したのは「Brown」モード。ゲインを上げていくと、エディ・ヴァン・ヘイレンばりの粘りと暴れが出てきて、まさに“あのサウンド”を彷彿とさせます。逆にボリュームを絞れば、軽やかなクランチに早変わりし、これだけでも1本のアンプとして成立する多彩さを感じました。このダイナミクスの幅広さこそ、Lion ’68のモデリング精度の高さを物語っています。
IRオフ時の“芯の太さ”とEQの質感
また、キャビネットIRをオフにし、自前のIRローダーを使用した際も、音の芯の太さや存在感は一切失われませんでした。EQの効き方はMarshallらしく中域がしっかりと主張し、適度なピーク感とレンジの広さを兼ね備えた調整が可能です。操作していて“あの音”に近づけるのが楽しくなるような、まさにギタリストの耳に寄り添った設計です。
ゴーストノート機能の臨場感
最後に特筆すべきは、「ゴーストノート再現機能」。これは実機アンプのトランスの共振によって生じるわずかな倍音や揺らぎをシミュレートする機能で、単なる音質再現を超えて“体感”の領域に踏み込んでいます。実際に大音量で鳴らした時にしか感じられなかった“あの振動と空気のざわめき”が、ヘッドホン環境でもしっかりと伝わってくるのには驚きました。
Lion ’68 Super Lead Amp:使用ギターとの相性

筆者は主にストラトキャスター(シングルコイル)とSG Jr(P90)で試しましたが、どちらもLion ’68との相性は抜群でした。とくに「Super Bass」モードでは、ストラトのきらびやかさを残しつつ、芯のあるクリーンやクランチが作りやすく、バンドアンサンブルの中でも抜けの良さを実感しました。
P90との組み合わせでは、「Brown」モード+Boostが絶妙。ミッドが前に出るP90と、コンプレッション感の強いサウンドが絶妙にマッチし、60〜70年代のガレージロック〜ハードロック的なトーンを簡単に引き出せました。
また、ボリュームノブの操作での追従性も非常に高く、ギター側で音量を下げたときの歪み具合や煌びやかさの変化が、まるで本物の真空管アンプのように自然。自宅での練習でも、ステージでも、ギター側の操作だけで多彩な表情を引き出せるのは非常に助かります。
Lion ’68 Super Lead Amp:使い方と活用シーン
Lion ’68の最大の魅力は、あらゆるシーンに柔軟に対応できる汎用性と、その高い信頼性にあります。ここでは、実際に使用した体験をもとに、自宅、リハーサル、ライブといった具体的な活用シーンを紹介します。
自宅録音における活用
自宅での録音時には、Lion ’68はライン接続による高品位な音質が大きな武器となります。USB経由でPCに接続し、UA Connectアプリを使うことで、ファームウェアアップデートや新たなキャビネット・シミュレーションの追加なども手軽に行えます。さらに、Bluetooth対応アプリを使えば、スマートフォンから簡単にプリセットの呼び出しや各種セッティングの調整が可能で、録音環境をよりスムーズに整えることができます。特に、Roomノブで得られる空間感のあるサウンドは、自宅録音に自然な奥行きを与えてくれる点で非常に重宝しました。
リハーサルスタジオでの実戦力
スタジオでの使用では、セットアップの簡単さと音の安定性が際立ちます。アンプを持ち運ぶことなく、PAやキャビネットに接続してすぐに本格的なPlexiサウンドを再現可能。4ケーブルメソッドを活用すれば、スタジオ常設のアンプと組み合わせて、Lion ’68をプリアンプとして使うこともでき、サウンドメイキングの幅がぐっと広がります。
ライブ現場での信頼性
実際にライブハウスで使用した際は、アンプを一切持ち込まず、Lion ’68をPAに直結するだけで極上のマーシャルサウンドが完成しました。出音は非常に安定しており、サウンドチェックでもほぼ調整不要。エンジニアからは「本当にこれペダルだけですか?」と何度も確認されるほどで、その再現性の高さに驚かれました。小規模なライブから中規模の会場まで、さまざまな環境で高いパフォーマンスを発揮してくれることを実感しています。
このように、Lion ’68は単なる練習用や録音用ペダルではなく、ステージでも信頼できる“実戦向けツール”として、筆者の機材リストにしっかりと定着しました。
Lion ’68 Super Lead Amp:問題点、気になる点

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機能的にはほぼ完璧に近いLion ’68ですが、いくつか気になる点もあります。まず、IRの読み込みが独自形式で、他社製のIRファイルを自由に読み込めないのはやや残念。また、モバイルアプリの接続が不安定になることがあり、設定変更時に手間取ることもありました。
また、キャビネット切り替え時の音量差が少し気になる場面もありましたが、これは使用環境による部分が大きいため、慣れでカバーできる範囲でしょう。とはいえ、こうした細かい点は“完璧を求める”人にとっての不満であって、基本的には完成度の高い一台だと思います。
まとめ:Lion ’68は音も使い勝手も本物志向のプレキシ・ペダル
UAFX Lion ’68 Super Lead Ampは、単なるアンプシミュレーターではありません。マーシャルPlexiの持つあの名機のサウンドとフィーリングを、手のひらサイズのペダルで極限まで再現した、まさに“プレキシの魂を持つペダル”です。
その高精度なサウンドモデリングにより、チューブアンプのような奥行きや空気感、倍音の広がりを忠実に再現。即戦力としての汎用性、ライブ現場での扱いやすさ、アプリ連携による拡張性、どれをとっても一級品です。多機能ではないかもしれませんが、そのぶん迷いがなく、まるで一本筋の通った職人のような潔さが感じられます。
価格は6万円前後と安くはありませんが、「このクオリティでこの価格なら納得」と多くのレビューで高評価を得ています。重量級のチューブアンプに疲れた人、自宅で本格的な音を出したい人、ライブで安定した音を手軽に出したい人、すべてのギタリストにおすすめしたい一台です。
音のクオリティ、操作性、携帯性、すべてにおいて妥協のない仕上がり。UAFX Lion ’68は、プレキシ系モデリングペダルの新たなスタンダードとして、確実に多くのギタリストの足元を彩る存在となることでしょう。

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